2016年、民進党政権が掲げた「2025年 非核家園」政策は、持続可能かつ低炭素な未来への第一歩として、多くの期待を集めた。再生可能エネルギーを核発電に代替させ、クリーンエネルギーの実現を目指したその構想は、当時「緑の未来」と称賛された。だが、政策開始から9年を経た今、理想と現実の乖離はますます浮き彫りとなっている。
再生可能エネルギー推進の裏で進む火力依存
台湾の2025年第一四半期の発電実績をみると、再生可能エネルギーの比率はわずか14〜15%にとどまり、目標とする20%には程遠い。代替されるはずだった核発電の空白と年々増加する電力需要は、主に天然ガスで埋められている。その結果、2000年に10%だった天然ガスの発電比率は現在47%にまで急増。石炭火力も39%と依然として高く、「非核によって脱炭素化できず、火力依存からも脱却できない」というジレンマに陥っている。
さらに深刻なのは、台湾全土で稼働する天然ガス受け入れ基地が大潭と永安のわずか2カ所に限られており、いずれも長年にわたり設計容量を超えて稼働中だ。第三の受け入れ基地として計画されている観塘の施設も、早くとも稼働は2026年以降と見込まれ、今後数年間はエネルギー供給が極めて不安定な状態が続く見通しである。
各国の電源構成と比較しても、台湾の現状は厳しい。アメリカの低炭素電源(核+再生エネルギー)比率が42%、韓国が40%、中国が38%であるのに対し、台湾はわずか17%にとどまる。世界が脱炭素を加速するなか、台湾はむしろ後退を余儀なくされ、国際的な環境ランキングでは最下位層に甘んじている。

台電の巨額赤字、責任は誰に?
台湾電力(台電)の連年の赤字も、エネルギー政策の歪みを如実に物語る。
まず、再生可能エネルギーの買取制度では、太陽光や風力の発電を1kWhあたり4.8〜6.6元という高価格で台電が買い取るよう制度設計されており、これは同社の平均売電価格を大きく上回る。さらに、間欠的な電力供給の特性により、膨大な資金を電力網の増強、蓄電システムやスマートメーターの整備に充てる必要が生じ、コストは年々膨らんでいる。
加えて、9割以上完成しながら未稼働のままの第四原発(核四)は、これまでに約3,000億元の費用が投じられ、稼働を見送る判断がなされた後も、維持費が台電の財政を圧迫し続けている。民進党はこの負担を前政権の馬英九氏に転嫁しているが、長期にわたる国民投票の封殺もまた、民意を無視した政治的決定の一環と言わざるを得ない。
また、天然ガス依存の拡大は、発電コストの上昇という形で台電の経営を直撃している。ガス発電は原子力の2〜3倍のコストを要し、価格変動も激しい。だが、政府は電気料金の据え置きを続け、台電はコスト転嫁ができないまま、国家予算や中油の支援で運営を継続するという、歪な構造が定着している。皮肉なのは、こうした背景を説明することなく「韓国より電気料金の上昇幅は小さい」と政府が自らの成果として喧伝している点である。