TSMC(台湾積体電路製造)が米アリゾナ州での工場建設に続き、アメリカへの追加投資として1000億ドルを発表したことにより、台湾が半導体分野での優位性を失うのではないかとの懸念が高まっている。これに対し、台湾大学経済学部名誉教授の陳添枝氏は、台湾が取るべき道は「中核的な技術開発の自主性を維持すること」だと強調した。また、「米国が求めているのがTSMCの製造ノウハウであるならば、わざわざ米国でプロセス開発を行う必要はない」とも述べた。
陳氏は、ラジオ番組『唐湘龍時間』に出演し、現時点でアリゾナ州の第一工場で量産されているのは4ナノメートルであり、台湾ではすでに2年以上前から生産していることを指摘。次にアリゾナ第二工場では3ナノメートルの製造を目指しているが、こちらも台湾ではすでに1年以上の実績がある。2年後にようやくアメリカで量産に移行できる見通しだという。さらに、アリゾナ第三工場では2ナノメートルの製造が計画されているが、台湾でようやく技術が公開された段階である。現時点で最も理想的なモデルは、「技術をまず台湾で成功させてからアメリカに移転する」ことであり、それによってアメリカでの生産コストを抑え、工場のリスクも最小限にできると説明した。
陳氏は率直に「TSMCの生産能力の海外移転は、もはや避けられない状況にある」と述べ、そのうえで「最も重要なのは、中核技術を台湾にとどめること」だと強調。次世代の製造プロセスの開発は、今後も台湾で行う必要があると指摘した。従来、TSMCは台湾国内で生産を行っており、技術開発も当然ながら台湾で進められていたが、現在は台湾とアメリカの両拠点で生産が進んでいる。もし今後、アメリカでの生産規模が一定の水準に達すれば、現地でも技術開発が行われる可能性があるという。
ただし陳氏は、仮にアメリカが求めているのが最先端のプロセス技術であり、単に「国内で3ナノメートルの量産を実現したい」というものであれば、「米国で製造プロセスの開発を行う必要はない」と明言した。なぜなら「技術を持っているだけでは意味がなく、実際に生産できてこそ価値がある」からである。現にIBMも2ナノメートルの技術を有しているが、製造には至っていない。アメリカに欠けているのは“製造能力”であり、TSMCから「製造ノウハウ(製造コード)」を得る必要があると指摘した。
編集:梅木奈実 (関連記事: トランプ氏「半導体は台湾に奪われた」再び発言、関税50〜100%導入を示唆 | 関連記事をもっと読む )
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