約20日前、米中貿易の膠着状態を打破する初の会合が、国際通貨基金(IMF)本部の地下で極秘に行われた。関係者によると、アメリカの財務長官スコット・ベッセント(Scott Bessent)と中国の財政部長・藍佛安氏が出席し、世界の二大経済大国間における高関税の応酬と崩壊寸前の貿易関係について協議したという。
『フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)』によると、これはトランプ大統領が就任し、関税戦争を開始して以降、両国の高官が初めて対面した会談であり、米中貿易交渉はこれにより大きな進展を見せた。ベッセント氏と米通商代表ジャミソン・グリア(Jamieson Greer)、そして中国国務院副総理の何立峰氏は、スイスの国連大使公邸において2日間にわたり長時間の協議を行い、その後ホワイトハウスと新華社は、12日に「米中ジュネーブ経済貿易会談共同声明」を発表。両国は一時的な貿易戦争の休戦に合意し、今後90日間の交渉期間において相互の関税を調整することとなった。アメリカは中国からの輸入品に課していた関税を145%から30%に、中国はアメリカからの輸入品に対する関税を125%から10%に引き下げることになる。
これまで、米中双方とも長期的な対立を辞さない姿勢を強調していただけに、この急速な交渉の進展に外部は驚きを隠せず、どちらが先に譲歩したのかが注目された。トランプ氏は12日にアメリカの勝利を宣言し、今回の合意によって「米中関係の全面的な再始動」が実現したと述べた。一方で、中国共産党機関紙『環球時報』の特約評論員・胡錫進氏は、「これは中国が平等と相互尊重の原則を堅持したことによる大きな勝利である」と主張している。
Who blinked first? How the US and China broke their trade deadlockhttps://t.co/dDrPNTpzB6
— Financial Times (@FT)May 12, 2025
アメリカが引いたのか? 経済学者たちは一致して、アメリカの関税引き上げは速度も規模も過剰であり、やりすぎだったと指摘する。仏系ナティクシス銀行のアジア太平洋地域チーフエコノミストであるアリシア・ガルシア=エレーロ(Alicia García-Herrero)氏は、「アメリカが先に譲歩した」と指摘。「アメリカは、自国が無制限に関税を引き上げてもダメージを受けないと考えていたが、それは誤りであることが証明された」と述べた。米中双方が相手の方がより関税の影響を受けやすいと考えていたが、ガルシア=エレーロ氏は「スイスで両国代表が迅速に関税の撤回に合意したことからも、貿易戦争は双方に損害を与えていることが明らかだ」と補足した。 (関連記事: 「関税145%→30%」で“まるで夢”米企業が爆買い 中国製品の“90日特需”に注文殺到 | 関連記事をもっと読む )
世界二大経済大国の関税戦争は、中国国内の失業者増加や、アメリカでのインフレ加速、さらには消費者の品不足といった影響をもたらす恐れがある。ワシントンのシンクタンク「民主主義防衛財団(FDD)」の上級研究員クレイグ・シングルトン(Craig Singleton)氏は、米中が驚くべき速さで合意に至ったことについて、「双方の経済的困難は、彼ら自身が公言しているよりもはるかに深刻であることを示している」と分析した。