台湾海峡戦争をどう防ぐか 米シンクタンクがトランプ氏に提言:米中は「歴史的妥協」を、台湾には「米軍支援は自明ではない」と明言せよ

2025-09-26 15:40
アメリカ合衆国大統領トランプ氏。(AP通信)
アメリカ合衆国大統領トランプ氏。(AP通信)
目次

台海の緊張が一段と高まる中、米中は前例のない衝突の瀬戸際にある。2025年9月15日、米国の著名シンクタンク「防務重視(Defense Priorities)」の軍事分析ディレクター、ジェニファー・カヴァナ(Jennifer Kavanagh)氏が『ニューヨーク・タイムズ』に寄稿し、大胆で賛否を呼ぶであろう提案を示した。トランプ政権に対し、中国と「大妥協」を模索して台海の安定を回復すべきだというもので、肝要なのは、米国が台湾に対し軍事支援は「保障でもなければ、無期限でもない」と明確に伝えることだとした。

カヴァナ氏は冒頭、過去10年の台海情勢が危うい「フィードバック・ループ」に陥っていると指摘する。台湾が対中で自律性を強めると、北京は軍事・言論両面で圧力を強化し、それに呼応してワシントンは民主パートナー支援の名の下に台湾への口頭・実質支援を引き上げる。この循環が自己強化を続け、台湾問題は米中関係の中核に浮上、衝突リスクは周回ごとに積み上がってきたという見立てだ。

ただし、これは宿命でも不可逆でもない。常識破りの交渉術で知られるトランプ氏なら、流れを反転させる余地がある――と同氏はみる。1949年の国府来台以降、台湾は米中関係の刺だったが、1970年代に米中は精妙な妥協に至った。米国は北京を中国の唯一の正統政府と認め、「台湾は中国の一部」とする中国の立場を「了解(acknowledge)」しつつ、台湾独立は支持せず、対台関係は非公式にとどめる一方で、防衛的装備の供与は継続した。いわゆる「戦略的曖昧さ」である。

この均衡は長年にわたり安定をもたらし、中国・台湾のみならずアジア全体の繁栄を下支えしたが、2016年を境に軋み始めた。蔡英文政権の発足で前任の馬英九氏とは異なる対中路線へ転じ、北京は軍事・経済圧力を強化。同年、トランプ氏は蔡氏の祝電に応じるなど外交慣例を崩し、米台高官交流の制限緩和も重なって北京をさらに刺激した。バイデン政権下では「台湾有事なら米軍が防衛する」との発言が繰り返され(のちに「政策変更はない」と修正)、2022年のペロシ下院議長の訪台は中国による過去最大級の軍事威嚇を誘発した。

「大妥協」の中身――米中それぞれが手放すもの

カヴァナ氏は「戦争回避案」として、大胆な取引を核に据える。米国は、域内の対中防衛態勢の過剰分を絞り、台湾への軍事支援は当然視も白紙委任もしないと明言する。台湾独立を支持しない立場を改めて強く示し、米台の公式接触は再び厳格に管理する。国会や国務省による台湾の国際機関でのプレゼンス拡大の働きかけを停止し、在台の米軍訓練要員は引き上げる。域内では、抑止と挑発が表裏一体になり得る装備配備を見直す。 (関連記事: トランプの「台湾防衛計画」露見――「戦略的曖昧さ」に終止符 産経新聞独自:米軍の台海軍事介入を前提に対中強硬を鮮明化 関連記事をもっと読む

これに対し中国には、「統一の時間表はない」と明言し、安易な武力行使はしないと確約すること、台湾へのサイバー攻撃・軍事威嚇・貿易制裁を大幅に減じることを求める。中国側にも受け入れの合理性はあると同氏はみる。台湾奪取は空海陸の超高難度作戦で成功は保証されず、失敗すれば政権の正統性に打撃となる。人民解放軍の継続的な腐敗是正や経済減速も、長期戦に耐える力を損ねかねないからだ。

最新ニュース
論評:トランプ砲が試す世界秩序 「パクス・アメリカーナ」は終わるのか
PFFプロデュース最新作『メイメイ』完成披露上映、日本と台湾の才能が結集 実姉妹女優の共演に観客喝采
独自》台湾頼清徳総統が「ノーと言いづらい」人選か――陳建仁氏が中央研究院長候補に浮上
舞台裏》台湾・国民党は財政難——それでも郝龍斌氏はなぜ党主席選に挑むのか?亡き恩人が遺した「金脈」が後押し
ネットマーブル、TGS2025で2大RPG発表『モンギル:STAR DIVE』初公開『七つの大罪:Origin』2026年1月28日発売決定
東京ゲームショウ2025、幕張メッセで開幕 初日来場者5万2千人超 過去最多1,136社出展・史上最大規模で25万人来場へ
独占取材》東京ゲームショウ2025、インディーゲームの新たな潮流 —— Annapurna Interactive初出展で注目作が集結
トランプ大統領、薬品に最大100%関税を発表 日本・欧州・インド製薬大手に直撃
インテルとTSMC、合弁出資で最大20%株式保有の可能性 協議中の4つのシナリオとは
ChatGPTが「投資顧問」に?ロボアド市場600%成長予測 ChatGPTで株を選ぶ時代、プロ投資家もAI活用、55%上昇の事例も
トランプ氏は台湾を中国に委ねるのか 学者が警鐘「台湾放棄の危険」
「自宅2階で安全」は本当か?台湾・花蓮を襲ったせき止め湖洪水と「垂直避難」の落とし穴
「黄金の72時間」最終局面へ 台風18号で花蓮・光復郷が壊滅的被害、捜索続く せき止め湖の最新状況が明らかに
大谷翔平&ダルビッシュ有がTシャツに!Fanatics×OVER ALLsのMLB公式コラボ、数量限定で登場
「TAKANAWA FILM FESTIVAL 2025」開催決定 河瀨直美監督や細田佳央太が登壇、屋外シアターで映画体験
トランプ国連演説が世界を震撼「あなた方の国は地獄行きだ」—環境団体を叩き、同盟国も挑発 英ガーディアン「米国の指導力はもはや期待できない」
DEAN & DELUCA、グランスタモールに初登場 人気トートやスイーツを9月25日から販売開始
トランプの「台湾防衛計画」露見――「戦略的曖昧さ」に終止符 産経新聞独自:米軍の台海軍事介入を前提に対中強硬を鮮明化
エキュート日暮里で「ようこそ ひぐらし商店の世界へ」開催 谷根千の人気店や限定グルメが集結
インタビュー》総統候補と党主席の不一致なら「2024年の二の舞」 台湾・国民党主席候補の郝龍斌氏「必要なら身を引く」
台湾作家・張國立、東京・紀伊國屋で日本読者と交流 『炒飯狙撃手』シリーズ秘話と日本文学への思いを語る
インタビュー》 「親米だが媚びず、和中だが従わず」 台湾・国民党主席候補の郝龍斌氏「備える以上に、戦争を避けることが重要」
TGS2025で「ファミリーゲームパーク」初登場 子どもも楽しめる無料コーナーと体験型イベントが充実
日本のギャンブル法制と依存症――英遺族団体と国内団体が「深刻な危機」と警鐘
陸文浩の視点:中国「二つの空母」南シナ海に展開、英空母打撃群は同海域を離脱
麻布台ヒルズで秋の夜を満喫 屋外映画「OUTDOOR CINEMA」とジン50種類以上を楽しめる「MEET GIN」と同時開催
米中TikTok交渉、トランプは何を求めるのか アルゴリズムの重要性と米国安全保障への影響
論評:台風18号で花蓮にせき止め湖決壊の悲劇 「回避困難」専門家の警告と政治対立が浮き彫りに
現地レポート》アジア最大級「SCAJ2025」東京ビッグサイト開幕 台湾ゲイシャ初披露&国内トップロースター集結
JR東日本「ゼロカーボン2050」戦略 高輪ゲートウェイで燃料電池・バイオガス設備を初公開
孔令信の見解:頼清徳総統の歴史観に矛盾?「安倍研究センター」除幕と終戦史観をめぐる波紋
天気予報》台風20号(ブアローイ)発生 トリプル台風の進路判明、教師節連休は午後雷雨に注意
「台湾有事はアメリカ有事」 新国防戦略、台湾防衛を表明―米軍が中国の台湾奪取をどう阻止するか
東京ゲームショウ2025  『Conqueror’s Blade』最新シーズン&異色リズムゲーム『MOMO Crash』が同時リリース
Nothing、フラッグシップイヤホン「Ear (3)」発売 2色展開で25,800円
「攻殻機動隊展 Ghost and the Shell」2026年1月開催へ 600点超の原画・未公開資料を虎ノ門ヒルズで初公開
ASAGIRI JAM’25開催決定!富士山麓で楽しむ音楽とキャンプ、25周年記念ラインナップ発表
自民党総裁選公開討論会 5候補が経済・外交・安全保障で激論、党再生への道を示す
防衛省有識者会議が抜本強化を提言 無人アセット導入、VLS潜水艦、太平洋側防衛の拡充を提示
論評:台北上海都市フォーラムが停滞――民進党はなぜ焦りを見せるのか
日本初「炎上展」が池袋で10月11日開幕へ SNS時代の“燃える体験”をリアルに再現
人物》潜水艦・電子戦・無人艇――台湾の水上・水中戦力を束ねる 「神龍、姿見せて尾を見せず」の孫春青氏
シンガポールのウォン首相、台海情勢に警鐘 「米中は台湾独立を抑止」「衝突ならアジアに波及」
9月25日限定!スカイツリーSDGs特別ライトアップ 17色の光で夜空を彩る
台湾・花蓮で再びせき止め湖越流の恐れ 残水3100万トン、決壊リスク高まる専門家警告