産経新聞は23日、ワシントンのシンクタンク「プロジェクト2049研究所」研究員、吉原俊井氏への独占インタビューを掲載した。吉原氏によれば、トランプ政権が近く公表する新たな「国家防衛戦略(NDS)」は、中国による台湾の武力併合を阻止することを対外戦略の最優先に据える。文書には、中国が大規模な対台湾侵攻作戦に踏み切った場合、米軍が直接介入するという具体的な想定まで盛り込まれる見通しだ。長年、米政府が維持してきた台海有事に関する「戦略的曖昧さ」に大きな修正が加わる可能性がある。
新戦略の二本柱:「米国第一」と「台湾抑止」
この情報は、米国防総省(ペンタゴン)の元政策顧問である吉原俊井氏が『《産経新聞》に明らかにしたものだ。吉原氏は米国の海洋戦略およびアジア軍事戦略の第一人者として知られ、その分析はトランプ第2期の国防政策の中核を色濃く反映していると日媒はみている。吉原氏によれば、ピート・ヘグセス国防長官の主導で国防総省が最終草案をまとめた新たな国家防衛戦略は、「アメリカ・ファースト」と「力による平和」を基軸に据え、「米本土防衛」と「中国による台湾併合の抑止」を最重要課題として並列するという。
本土防衛では、弾道・巡航ミサイルへの備えを大幅に底上げする「ゴールデン・ドーム(Golden Dome)」構想を掲げ、米本土を脅威から守る狙いだ。一方の対外戦略では、中国による台湾の軍事的「からの転換――トランプ政権の新たな対中姿勢征服」を抑止することを最優先課題に位置づける。吉原氏は、ここで言う「抑止」は対中の軍事力強化にとどまらず、具体的な軍事介入計画を含む点が肝要だと指摘。中国が台湾への大規模上陸作戦に踏み切った場合、米軍は目標達成を阻むため直接介入する想定だという。
ニュース豆知識:《台湾関係法》と「戦略的曖昧さ」
1979年に成立した米国の国内法「台湾関係法(Taiwan Relations Act)」は、対台湾政策の基本枠組みを定めている。米国は台湾への防御的な武器供与を認め、台湾の将来を非平和的手段で変えようとする試みに「重大な関心」を表明する一方、台湾が攻撃を受けた際に米軍が出動するかどうかは明示していない。
このあえて結論をぼかす方針は「戦略的曖昧さ(Strategic Ambiguity)」と呼ばれ、中国(北京)の拙速な軍事行動を抑止すると同時に、台湾側の過度な独立志向や冒険主義を抑える狙いがある。
「戦略的曖昧さ」からの転換――トランプ政権の新たな対中姿勢
米国は長年、台湾関係法の枠内で台海有事の介入可否をあえて曖昧にする「戦略的曖昧さ」を維持してきた。トランプ第1期も例外ではなかったが、新たな国家防衛戦略は軍事介入を前提に、中国軍の台湾制圧を阻止する目標を明確化する見通しだ。第2期政権の対中強硬姿勢を鮮明にする転換点となる。
吉原氏は、ワシントンが台湾の防衛努力の現状に不満を抱いているとも明かし、新戦略には台湾に対する自助努力の大幅強化が明記されると述べた。正面からの上陸だけでなく、海上封鎖や台湾内部への軍事・政治的撹乱(情報戦やサイバー等)といった手法も想定し、これら複合的脅威への対処を戦略に盛り込むという。
実効的な抑止を実現するため、新戦略は潜水艦発射型巡航核ミサイル(SLCM-N)の開発継続、グアムのミサイル防衛能力の増強など、一連の軍備強化を伴う。吉原氏は最後に、日本をはじめとする同盟・同志国との防衛協力がこれまで以上に重要になると強調。米国は同盟諸国とともに対中抑止の防衛線を構築し、インド太平洋の平和と安定の維持に一層積極的に取り組む方針だと述べた。
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