台北駐日代表処台湾文化センターと紀伊國屋書店が共催する台日作家交流座談会が9月21日、紀伊國屋書店新宿本店で開催され、『炒飯狙撃手』シリーズの著者・張國立氏が登壇した。日本の文芸評論家・杉江松恋氏との対談形式で行われた講座は、募集開始からわずか1週間で満席となり、多くの推理小説ファンが会場を訪れた。
張氏は輔仁大学日本文学科を卒業後、『時報週刊』の編集長兼社長を務め、歴史、軍事、スポーツ、美食文化など幅広い分野で著作を発表してきた。これまでに出版した作品は約60冊にのぼり、時報文学賞や皇冠大衆小説賞を受賞している。代表作『炒飯狙撃手』シリーズは、台湾の実際の事件を題材としつつ、スパイ小説と美食要素を融合させた独自のスタイルで知られる。すでに多言語に翻訳されており、日本語版はHarperCollins Japanから刊行され、現在第2巻まで発売されている。
対談ではまず、作家としての原点について語り、父親が遺した『福爾摩斯』(シャーロック・ホームズ)とアダム・スミスの『国富論』の2冊が大きな影響を与えたと明かした。また、台湾人にとって「食」が日常生活の中心にあることから、自然に料理の要素を作品に取り入れるようになったと説明。自身も調理師免許を取得するほど料理への熱意が強く、好きな料理を問われると「炒飯(チャーハン)」と即答し、会場の笑いを誘った。
さらに、敬愛する日本の作家として芥川龍之介と三島由紀夫を挙げ、創作の信念は「食」にあると強調。創作の裏側にある理念をユーモアを交えて語る姿に、聴衆は終始引き込まれていた。
台湾文化センターは毎年、日本語に翻訳された台湾文学の作家を招聘し、現地の批評家や翻訳者との対話を通じて日本読者との交流を深めている。今回の座談会もその一環として実施され、台湾文学と日本の読者をつなぐ貴重な機会となった。
編集:梅木奈実 (関連記事: 麻布台ヒルズで秋の夜を満喫 屋外映画「OUTDOOR CINEMA」とジン50種類以上を楽しめる「MEET GIN」と同時開催 | 関連記事をもっと読む )
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