台湾・国民党主席選挙まで残り3週間。藍陣営(国民党)での主要争点は相変わらず両岸関係と対米関係だ。台北市前市長の郝龍斌氏は『風傳媒』の取材に応じ、民進党政権を批判。「本来、米中台は“等辺三角形”であるべきだが、現在はバランスが崩れ、台湾は米国の“人質”のような位置付けに置かれている」と述べた。民進党は口では親米を掲げるが、実際の姿勢は屈従に近いとの見方も示した。
郝氏は党のシンクタンク強化も公約に挙げ、「国民党のシンクタンクは論戦の“弾薬庫”であるべきだ。私が主席に就けば、党主席は財団のトップを兼ねず、専門性と実行力を備えた専任の責任者に全権を委ねて運営させる」と語った。
和中で台湾を守る――対話で対立に代える
郝龍斌氏は、米中台関係は「親米だがひざまずかず、対中は融和だが中国共産党に追随せず、対日は友好だがへつらわない」姿勢で臨むべきだと強調した。台湾は「和中保台」を掲げ、対立ではなく対話で向き合うべきだとし、「台湾を守るには備えることも必要だが、より重要なのは戦争を避けることだ。避戦のためには交流と意思疎通が欠かせない」と述べた。
『風傳媒』が「備戦より避戦を重視すると発言して、民進党陣営から攻撃される恐れはないのか」と問うと、郝氏は「もちろん恐れはない。これまでも公言してきた」と回答。「私たちは同じ台湾に暮らす人間だ。内部で敵を探し分断を生むのは極めて不適切だ」とし、率直に「万一いつか中国が武力行使に出れば、結束して立ち向かわなければならない。ゆえに政府が国内の亀裂をつくるべきではない」と述べた。
国民党シンクタンクを「弾薬庫」として再建 当選後は理事長を兼務せず
国民党のシンクタンクが政策論と「弾薬」をどう供給するかについて、郝龍斌氏はまず「党のシンクタンクは重要な論述の弾薬庫であるべきだ」と強調した。自身が主席に選出された場合は、専任の責任者を置き、党主席はシンクタンクの理事長を兼ねない方針を示した。専門性と実行力を備えた人材を起用し、全権をもって専職で組織を率いさせる考えだ。 (関連記事: インタビュー》総統候補と党主席の不一致なら「2024年の二の舞」 台湾・国民党主席候補の郝龍斌氏「必要なら身を引く」 | 関連記事をもっと読む )
あわせて、国民党は立法院だけでなく各地の議会でも多数を占める地域が多いとして、党の総合戦力は「党中央・各級議会/立法院党団・党系シンクタンク」の三者が連携してこそ発揮できると指摘。シンクタンクは全党団への後方支援を担う“弾薬庫”として機能し、対外の論戦に臨む際には、要点を絞った簡潔なブリーフを迅速に提供して論述の火力を高めるべきだと述べた。現在はシンクタンクの弱体化が目立つとして、当選後は機能強化に踏み込む考えも示した。
さらに、今後のシンクタンクは政策論だけでなく、疑惑追及を長期で追う役割も重視すると言及。たとえば「美濃大峡谷」をめぐる論点のように、メディアで数日取り上げられて終わる“打ち上げ花火”ではなく、台塩の陳啟昱前董事長による利益供与疑惑と保釈の問題など、国民が実感を持てる段階まで粘り強く追うべきだとした。
