米中が関税戦争の「休戦協定」に合意し、90日間の観察期間に入ったのを受けて、日本の石破茂首相はアメリカとの交渉戦略を密かに調整した。6月中旬に予定されていた日米二国間貿易協定の合意スケジュールは7月初旬に延期され、アメリカによる「対等関税」猶予期間(7月9日)終了前に交渉の余地を確保する狙いがある。
しかし石破政権は、対米交渉で目立った成果を挙げられない一方で、国内では支持率の低下と党内勢力図の再編という課題に直面しており、外交・内政の両面から圧力を受け、「改革派」というイメージが次第に色あせつつある。
内閣支持率は33%、4割超が関税による経済への影響を懸念
石破政権は当初、6月中旬のG7サミット前に米国との合意をまとめ、外交成果をアピールする計画だった。だが、経済再生担当大臣の赤澤亮正が2度にわたって渡米したものの、交渉は進展しなかった。トランプ前大統領は日本との早期合意を望むと公言していたが、具体的な約束には一貫性がなく、特に日本側が最も注目する自動車関税問題については沈黙を貫いている。
石破首相自身も5月初めにトーンを変え、「急いで合意する必要はない」と強調し、日本側が一方的に不利となる取り決めは受け入れないと重ねて主張した。現在、日本政府は米中が新たに締結した合意内容や、米英間の通商取り決めを精査し、ワシントンの交渉ペースを見極めようとしている。『朝日新聞』は関係者の話として、石破首相が7月9日前後に訪米を予定していると報じている。ちょうど米政府が設定した90日間の対等関税停止期間が終了するタイミングである。
石破首相は外交を通じて政権の安定を図ろうとしているが、国内の政治基盤は弱まりつつある。NHKが12日に発表した最新世論調査によれば、石破内閣の支持率は33%で、前月比2ポイント減。不支持率は48%に上昇した。
この調査では、回答者の4割以上が「米国の関税が日本経済に悪影響を及ぼすことを強く懸念している」と答え、また、日米交渉に「まったく期待していない」または「あまり期待していない」と答えた人の合計は47%に達した。これらの数字は、石破首相が対外交渉で市場の不安を鎮められていないことを示すと同時に、かつての「改革者」としての評価が機能していない現状を浮き彫りにしている。
強硬姿勢は無効?対米に交渉カードなく、対中にも戦略欠如の声
「インド太平洋フォーラム」特別顧問で、開南大学地域発展センター主任の陳文甲氏は、『風傳媒』の取材に対し、「石破氏は過去、『反派閥』『旧体制打破』のイメージで草の根や世論の支持を集めてきたが、選挙で敗北して以降、そのイメージが逆にプレッシャーになっている」と指摘した。 (関連記事: トランプのアジア同盟国、残るは台湾だけ?親米の風向きが変わった日本、頼清徳政権は「安倍カード」に固執か | 関連記事をもっと読む )
陳氏によれば、自民党の主流派である岸田派や麻生派はもともと石破氏に警戒心を抱いており、現在は野党の勢力が拡大し、若手議員が台頭するなか、党内の中堅世代も水面下で「ポスト石破」への準備を進めているという。