2025年の台積電(TSMC)技術フォーラムにおいて、デルタ電子の電源・システム事業群総経理である陳盈源が基調講演を行い、生成AIによってクラウドと演算設備の需要が急成長している一方、その背後にあるエネルギーチャレンジが急浮上していることを指摘した。彼は「我々はAIが遍在する時代に突入しているが、真に直面すべき課題は電力の供給源と熱の排出方法である」と述べた。電力の変動が電力網に与える圧力から、液冷却による熱管理やモジュール化された配備の革新まで、デルタ電子はデータセンターの新世代基盤インフラに対する6つの再構築戦略を提示した。
デルタ電子によれば、AIチップの消費電力はわずか6年で6倍に跳ね上がり、2020年の約400ワットから2024年には1200ワット、2026年には2400ワットを超えると予測されている。これらのチップが大規模にAIシステムに積み重ねて使用される際、単一のラックには288個、さらには576個のGPUが配置され、総消費電力は1メガワットに達し、1万世帯の電力使用量に相当する。
AIチップの消費電力が急上昇、データセンターは都市規模のエネルギー消費に迫る
この高密度な電力需要は、データセンターの規模の概念を刷新し、特にAI計算が「同期オンライン・同期オフライン」の負荷特性を呈した場合、従来のクラウドサービス以上に電力システムに大きな圧力をかける。
電力網の圧力に即座に対応できず、デルタが6つの主要課題を提示
陳盈源は、AIによって大幅に増加した電力負荷の変動が、UPSの応答遅延を引き起こし、発電機が出力を迅速に調整できず、「電力網逆差」により停電を引き起こす可能性があると指摘した。特に負荷が激しく変動するとき、従来の電力網の慣性と時間反応ウィンドウは瞬時の需要に追いつくことができず、新たな技術的ボトルネックを形成する。
この問題に対して、デルタ電子はシステムレベルの解決策を提示した。PCS(電力調整システム)動的負荷補償モジュールを導入し、高負荷時に電力を供給し、低負荷時にエネルギーを回収することで、AIシステムの総体的な負荷が「恒常的に近づく」ことを実現し、電力網への影響を効果的に軽減する。
電源モジュールの高周波化、トランスの体積が9割縮小
AIが電源密度と応答速度の両方を求める中で、デルタ電子は高周波電源変換モジュールを展示した。スイッチング周波数を100kHzから1MHzに引き上げ、トランスの体積を90%縮小し、効率と電力密度を顕著に向上させた。
さらに、独自に開発したピニングデバイスと革新的なパワートポロジーを活用して、デルタ電子は能動素子、受動素子、制御モジュールを高効率アーキテクチャに統合し、出力の安定性を向上させるとともに、高密度配備に空間の柔軟性を提供する。
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放熱がAIシステムの第2の重要なボトルネックとなっている。単一のチップが2kWの熱排出を行う場合について、デルタ電子は従来の空気冷却方式がすでに十分でないと述べた。