台湾海峡有事で日米はどう動くか 日本の識者が警鐘「トランプ氏が台湾見捨てる恐れ」

2025-05-17 15:45
日本防衛省防衛研究所の前部長、拓殖大学海外事情研究所の教授である門間理良。(写真/黄信維撮影)
日本防衛省防衛研究所の前部長、拓殖大学海外事情研究所の教授である門間理良。(写真/黄信維撮影)

元防衛省防衛研究所部長で拓殖大学海外事情研究所教授の門間理良氏が11日、参議院議員会館で「台湾有事と日本の対応——トランプ政権成立後の中台関係」と題する講演を行った。門間氏は中国が近年、外交孤立、軍事圧迫、経済浸透の三手段を駆使して台湾への圧力を強めていると指摘した。

防衛省防衛研究所は同省直轄の政府系シンクタンクで、各国の国防省における戦略研究機関に相当し、台湾の国防安全研究院に匹敵する。また拓殖大学海外事情研究所は同大学に付属する学術研究機関で、国際政治や外交戦略、安全保障を専門とし、特にアジア太平洋地域や日本の対外政策に重点を置いている。

風傳媒》の質問に対し、トランプ大統領の姿勢からアメリカが台湾政策を変更し台湾を見放す可能性について、門間氏は「平時においてアメリカは台湾を簡単に見放すことはない。台湾はアメリカの重要な戦略的存在だからだ。しかし台湾海峡で戦争が起きた場合、状況は一変するだろう。中国が台湾に軍事攻撃を仕掛けた場合、トランプ政権が直接介入せず台湾を放置する可能性があり、これに対して台湾は強い警戒が必要だ」との見方を示した。バイデン政権がインド太平洋地域の戦略的均衡維持を重視する一方、トランプ大統領の「アメリカ第一」政策はアメリカの台湾へのコミットメントに不確実性をもたらし、台湾の安全に重大な課題を突きつけ、地域情勢にさらなる緊張を与える恐れがあるという。

また、門間氏はこうした状況下での日米同盟への影響も分析。「アメリカが介入しない選択をした場合、日本が単独で台湾を支持できるか」との問いに対し、物理的条件や軍事能力から見て、日本が単独で中国に対抗するのは困難だと指摘した。このため、日本は最悪の事態に備える必要があり、台湾が中国に敗れれば、日本の南西諸島(琉球諸島)が次の最前線となり、より大きな安全保障上の圧力に直面するとの見通しを示した。

門間氏によると、台湾が今後注視すべきはアメリカの対台湾政策、米中技術戦争、中国の軍事圧力および経済戦略の4つの変数だという。トランプ氏が再び大統領となった場合、対台湾軍事販売や安全保障の約束がより取引的になる可能性があり、台湾は支持を得るためにより高い代価を支払う必要に迫られるおそれがある。また技術戦争においては、アメリカの供給チェーン移転が進む中、台湾は米中競争における技術的優位性と経済的利益を維持する必要がある。中国の軍事圧力が続く中、将来的に台湾に対する軍事演習が拡大する恐れもあり、台湾は防衛強化と日米との協力深化が求められる。さらに中国が貿易制限や供給チェーン競争を通じて台湾に圧力をかける可能性も指摘し、台湾は経済リスク軽減のため市場多様化を加速すべきだとした。今後数年間が台湾の戦略的方向性を決める鍵になるとみられる。

また、《風傳媒》の質問に対し、トランプ氏の日米安全保障条約批判について門間氏は、実際には同氏が第一期目から批判を展開していたと説明。日本に対して十分な安全保障上の見返りがないとして軍事費の増加を求めていたため、安倍政権から岸田政権に至るまで日本政府は防衛予算や関連法制を積極的に強化し、アメリカからの圧力を軽減する取り組みを進めてきたという。トランプ氏がどのように批判しても、日本は自らの防衛を推進し続けるとの見通しを示した。これはトランプ氏からの潜在的圧力への対応にとどまらず、日本政府の長期的な国防戦略に基づくものだ。東アジアの安全保障環境の変化に伴い、日本は防衛政策を段階的に調整し、自衛隊の戦力と対応能力を強化することで自国の安全確保を図っている。

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