米国商務長官ハワード・ルートニック氏は、米国政府が台湾との新たな貿易協定の締結を積極的に進めていると改めて強調した。その核心の一つが半導体製造であり、同氏はインタビューの中で、米国と台湾が生産比率を「五五分」に分ける必要があると直言した。また、従来の「シリコンシールド」とは異なる論点を提示し、米国本土に十分な半導体生産能力がなければ台湾を本当の意味で守ることはできないと指摘した。この発言は、供給網をめぐる米側の切迫感を浮き彫りにすると同時に、台湾社会に安全保障と産業の結びつきを再考させるものとなった。
ルートニック氏が「五五分」を提案する理由
ルートニック氏は、トランプ政権の戦略は半導体製造を米国に回帰させることだと明言した。
「自国で半導体を製造できなければ、どうやって自らを守るのか」とし、政権発足当初、米国製半導体はわずか2%に過ぎなかったことを明かした。目標は40%まで引き上げることであり、5,000億ドル超の投資と完全なサプライチェーン統合を必要とするほぼ不可能な挑戦だとしつつも、「台湾を参加させ、同意させることがトランプ政権の力だ」と述べた。
米国側は台湾に対して「五五分」の生産配分を求めている。その理由は過度な集中が健全でないためだという。
「台湾は米国が必要とする半導体の95%を生産していることを自負しているが、トランプ政権から見れば、この状況は双方にとって健全ではない」とし、少なくとも半分の生産を米国が握ることで依存度を下げ、供給網の強靭性を高めたいとの考えを示した。
米国が台米貿易協定で得たいものとは
ルートニック氏は米メディア《NewsNation》の取材に対し、「これは非常に大きな協定であり、間もなく到来する。私はまもなく台湾と本格的に協議を開始できると期待している」と語った。米国が協定推進を急ぐ背景には、半導体供給網リスクが密接に関わっている。
米国が台米協定で何を求めているのかとの問いに対し、同氏は「スマートフォンや自動車に搭載される半導体の95%が台湾で生産されている。台湾は中国からわずか80マイルしか離れておらず、この状況は米国にとって憂慮すべきものだ」と述べた。
台湾の「シリコンシールド」への見解
台湾は長年、半導体を安全保障の「シリコンシールド」と捉えてきた。しかしルートニック氏は異なる視点を示し、「もし95%が台湾で生産されているとすれば、米国はどうやって即時に半導体を手に入れ台湾を守るのか。飛行機や船で運ぶのか」と疑問を呈した。
その上で「米国は台湾への依存を減らし、五五分で分担すべきだ。そうすれば我々は依然として根本的に台湾に依存している。なぜなら、もう半分がなければ我々は生き残れないからだ」と強調した。
さらに同氏は懸念を和らげるかのように、「五五分の分担は台湾の安全を弱めるものではない。むしろ供給網の協力が深まることで、米国の台湾に対する安全保障上のコミットメントは揺るぎないものとなり、より確実になる」と語った。
台米産業協力の次のステップ
ルートニック氏は、台湾は米国から9,000マイルも離れており、重要なパートナーである一方で地政学的リスクの震源地でもあると指摘した。中国が台湾を奪取する意図を隠していない現状を踏まえ、米国は国内生産能力の構築をより強く志向しており、その推進に台湾の協力を求めている。
台米の「五五分」構想が現実となれば、台湾の産業構造や経済的自立性に大きな影響を及ぼす可能性があり、貿易交渉は国家安全保障に直結する戦略的課題として位置づけられることになる。
編集:梅木奈実 (関連記事: トランプ政権「米台半導体五五分」構想 TSMC投資が台湾経済を空洞化させる危機 | 関連記事をもっと読む )
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