震災から生まれた大槌刺し子 女性刺し子職人の手仕事が世界へ羽ばたく

東日本大震災をきっかけに誕生した「大槌刺し子」、女性職人たちの一針一針が地域を越え世界へ広がっている。(写真/黃信維撮影)
東日本大震災をきっかけに誕生した「大槌刺し子」、女性職人たちの一針一針が地域を越え世界へ広がっている。(写真/黃信維撮影)

岩手県が主催し、公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)が岩手県からの委託を受けて実施した「岩手県プレスツアー」は、9月18日から19日にかけて「多様な担い手が未来へ紡ぐ-岩手の伝統継承の現場を訪ねて」をテーマに県内で行われた。初日の訪問先となったのは、東日本大震災をきっかけに岩手県大槌町で誕生した「大槌刺し子」である。震災を経て地域に根付き、いまや世界に広がるブランドへと成長を遂げた活動の全貌が紹介された。

東日本大震災をきっかけに誕生した「大槌刺し子」、女性職人たちの一針一針が地域を越え世界へ広がっている。黃信維
東日本大震災をきっかけに誕生した「大槌刺し子」、女性職人たちの一針一針が地域を越え世界へ広がっている。(写真/黃信維撮影)

大槌刺し子は、2011年の震災直後、避難生活を送る女性たちに針仕事を通じて再び生きる喜びと希望を取り戻してほしいという願いから始まった。5名のボランティアによって「大槌復興刺し子プロジェクト」が立ち上げられ、現在は特定NPO法人テラ・ルネッサンスが運営を担っている。震災を乗り越え、伝統手芸「刺し子」は、一針一針に込められた思いと共に、手仕事の温もりを伝え続けている。

刺し子は、古来より布を補強し長く使うために生まれた技術であり、「ものを大切にする」精神が育んだ生活の知恵である。布に模様を縫い込む行為は、寒冷地である東北地方を中心に受け継がれてきた。現場の職人は「昔の人たちは布が貴重で、新しい布を買うことができなかった。そのため破れたところを刺し子で補強し、生地を大事にする知恵から始まったのです。模様一つ一つにも意味があり、おしゃれとして柄を取り入れることもあったと聞いています」と説明し、刺し子が生活文化に根ざした背景を伝えた。

東日本大震災をきっかけに誕生した「大槌刺し子」、女性職人たちの一針一針が地域を越え世界へ広がっている。黃信維
東日本大震災をきっかけに誕生した「大槌刺し子」、女性職人たちの一針一針が地域を越え世界へ広がっている。(写真/黃信維撮影)

現在、大槌刺し子には40代から80代までの女性たちが職人として集まり、「どんな人が使ってくれるのだろう」と思いを巡らせながら、一針一針を進めている。会場では、布に針を通すたびに「チクチクチク」という小さな音が響き、静かな空間に針仕事のリズムが広がった。現場で活動するのは、後藤富子、石井ルイ子、佐藤淳子、菊地広美らであり、それぞれが日々の生活と共に刺し子に取り組んでいる。

活動当初はふきんやコースターの製作から始まり、やがて技術力が認められて事業化とブランド化が進展した。OEM生産や企業とのコラボレーション、百貨店での販売など販路を拡大し、2023年にはアパレルメーカーの株式会社MOONSHOTと協働し、刺し子職人部門「SASHIKO GALS」プロジェクトを立ち上げた。スニーカーなどへのカスタム刺し子は海外の著名人にも愛用され、国際的な注目を集めている。 (関連記事: 株式会社岩鋳 南部鉄器に宿る伝統と革新、世界市場へ広がる「IWACHU」の挑戦 関連記事をもっと読む

2024年12月、SASHIKO GALSの公式インスタグラムにアメリカからメッセージが届き、送り主は2000年前後にポップアイドルグループ「*NSYNC(イン・シンク)」のメンバーとして人気を博し、現在は俳優・ミュージシャンとして活動するジャスティン・ティンバーレイクさんの関係者で、「彼はSASHIKO GALSの大ファンだ」と伝え、誕生日プレゼントとして刺し子スニーカーを注文したという。この国際的な依頼は、チームにとって思いがけない驚きとなり、活動を続ける大きな励みにもなった。

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