北海道・層雲峡で自然ガイドとして活動する台湾出身のTobyさん。現在は上川町の層雲峡ビジターセンターに勤めながら、個人で登山やエコツアーのガイドも行っている。来日して約2年半。日本の都市部ではなく、あえて自然豊かな山間の地を選んだ理由は何か。『風傳媒』の取材に応じ、北海道へ移り住んだ経緯、日々の仕事、そして層雲峡で見つけた「新しい居場所」について語ってくれた。

「最初にここへ来たのは、ほとんど偶然でした。もともとはもっと山奥で働いていたのですが、知人の紹介で層雲峡に移ってきたんです。観光地としての知名度は海外でも意外と高くて、台湾でも知っている人が多いと後から気づきました。」
拠点を移してからは、ビジターセンターで海外観光客の案内を担当。天候や季節に合わせた情報を提供する一方、自らガイドとして登山や自然体験のツアーも企画・同行している。「ここは勤務シフトが比較的自由なので、自分のガイド活動と両立できるのがありがたいです。自分でルートを調べ、お客様を好きな場所にご案内できるのが楽しいですね。」
一方で、外国人ならではの制約も感じるという。「ビザの条件や仕事内容の制限はやはりありますし、思い通りにいかないこともあります。でもそれも含めて受け入れています。あとは実家に帰るのが大変なこと。旭川空港までの距離もあって、移動はいつも一苦労です。」
冬の厳しさについてはこう話す。「東京とはまったく違います。雪が膝まで積もることもあるし、朝は玄関から車まで道を掘るところから始まる。路面は凍るし、ドアを開けた瞬間に吹雪が吹き込むことも。でも、そういう自然と向き合う生活が、逆に面白いんです。」
印象に残っている体験も教えてくれた。「友人と川の源流までさかのぼったことがあります。大きな川がだんだん細くなって、最後は本当に一滴一滴になる。冬の早朝に登って、雪山が朝焼けでピンク色に染まる一瞬を見たことも忘れられません。」
かつてはヒグマが出没する山道の管理業務も担当していた。「新人の頃、大きな熊と子熊に遭遇して、母熊が自分を守ろうとして突進してきたんです。本当に命の危険を感じました。距離もすごく近かった。あれは忘れられない経験です。」
台湾出身として、地域との関わりや文化の橋渡しについて尋ねると、こう答えた。「意識して台湾文化を伝えているわけではありませんが、地元の人たちは“台湾の友達がいる”ということで自然と興味を持ってくれます。旭川で中国語を教えたこともあります。こちらの人たちは、新しい文化や違う価値観にも柔軟だと感じます。」
層雲峡で暮らすうちに、第二の故郷のような感覚も芽生えたという。「町は小さくて、スーパーや郵便局に行くとみんな顔見知り。そういうコミュニティのつながりが心地いいんです。仕事を通じて地元の団体とも協力する機会が増え、この土地にますます馴染んできた気がします。」
今後の目標を聞くと、「環境教育や自然体験を通じて、自然の美しさだけでなく、環境との向き合い方も伝えていきたい。日常でできることや選択肢を考えるきっかけを提供したいですね。年齢や国籍に関係なく、いろいろな人に向けて活動の幅を広げていきたいと思っています」と語った。

彼が暮らす層雲峡の魅力は、季節ごとに劇的に変わる自然の表情にもある。「春は雪解けとともに花が咲き、夏は一気に百花繚乱。秋は鮮やかな紅葉、冬は真っ白な世界に包まれる。一年を通して色が移り変わる、そのわかりやすさが大好きなんです。」
自然に抱かれながら働き、暮らす。層雲峡という場所が彼にとって「自分の居場所」になっていく過程は、都市では得られない豊かさを教えてくれる。
台湾ニュースをもっと深く⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp (関連記事: 栃木県で17年暮らす台湾人・婷婷さん——地方で築いた創業の軌跡 | 関連記事をもっと読む )