台湾・台北地方法院は25日、前民進党ベテラン党務担当の黄取榮らが中国共産党中央軍事委員会の情報要員に取り込まれ、スパイ活動を行っていたとして、《国家機密保護法》違反などで黄取榮に懲役10年の判決を言い渡した。国民党の呉宗憲・立法委員は、黄取榮が不法所得として約500万台湾元(約2,400万円)の資金を得ていたと指摘。「この金を即時に差し押さえ、追徴しなければ、『台湾を裏切っても中共から賞金を受け取れる』という誤ったメッセージになる」として、司法当局に対し黄や関係第三者の資産凍結を直ちに行い、犯罪収益の洗浄を許さないよう強く求めた。
呉氏は26日、フェイスブックで声明を投稿。25日の台北地院の発表によれば、今年上半期に露見した府・院・党にまたがるスパイ事件で、民進党の前資深党員である黄取榮は中国側に取り込まれ、国内で情報ネットワークを構築。国家安全に関わる情報を収集し、自ら中共側に引き渡していた。現時点の証拠では、中国側からの報酬は497万7,500台湾元(約2,389万円)に上るという。
呉氏によれば、黄の行為は(1)内通者の勧誘――民進党「民主学院」前副主任の邱世元を通じ、総統府・副総統府・外交部の内部ネットワークに浸透、(2)浸透の指揮――総統府前諮詢の呉尚雨、前外交部長・呉釗燮の秘書・何仁傑らを取り込み、わが国の機密外交・国安関連日程を探知・収集・提供、(3)中国側への報告――機密情報と先方の要求を統合して分析報告にし、暗号化ソフトで情報員へ送信、(4)巨額の受領――中国側から約500万元の報酬を受け取り、邱世元と「金流の断点化」による手口で台湾へ資金洗浄して送金――といった一連のプロセスに及んだとしている。
さらに呉氏は、黄が一貫して犯行を否認し反省の色が見られない一方、約500万元の「情報収入」を保持したままである点を「到底看過できない」と批判。判決文でも、被告4人はいずれも長らく政界や公職に身を置き、「国家への忠誠」の重みを誰より理解すべき立場にありながら、外交部や総統・副総統の極めて敏感な日程を探知・収集・漏洩・引き渡したことは、わが国の外交安全を害し、中共の「三戦(世論戦・心理戦・法律戦)」を直接助長するもので、国家利益に重大な損害を与えたと特に指摘されたという。
呉氏は、重い量刑と並行して「不法な経済的利益の即時遮断」こそ急務だと強調。「この資金を押収・追徴しなければ、『情報を金に換える』背信行為を助長しかねない」と述べ、刑事訴訟法133条に基づく犯罪収益の差し押さえを速やかに執行するよう要請。「不法所得を徹底的に剥奪してこそ、同種の売国行為を真に抑止でき、司法の信頼も守られる。司法は直ちに差し押さえを」と訴えた。
台湾ニュースをもっと深く⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp (関連記事: 台湾憲兵部隊の舞台裏 スパイ摘発や軍紀問題で揺れ、蔡英文元総統の近侍が参謀長に起用 | 関連記事をもっと読む )