ユーモアを解さない独裁者──トランプ氏も冗談に過敏、米国の言論の自由は中国の後を追う

2025-09-28 16:35
2025年9月21日、アメリカ大統領トランプ氏がチャーリー・カーク氏の追悼式に出席。(AP通信)
2025年9月21日、アメリカ大統領トランプ氏がチャーリー・カーク氏の追悼式に出席。(AP通信)
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アメリカは言論の自由を誇ってきたはずだ。ところが、深夜トーク番組『ジミー・キンメル・ライブ!』が、司会ジミー・キンメル氏によるチャーリー・カーク襲撃事件の揶揄をめぐり、9月17日に放送中止に追い込まれた。6日後に世論の反発を受けて再開したものの、この短い“封殺”は十分な警鐘だ。権威体制下を経験した華人にとって、これは見慣れた構図でもある。自由は一瞬で崩れない。少しずつ蝕まれ、沈黙が習い性になる――。『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』は、トランプ氏が免許取り消しの示唆、批判者への報復、親和的メディアの優遇といった手法で、中国やロシアの権威主義と歩調を合わせつつあると指摘する。合衆国には憲法と市民社会の防波堤がまだある。だが沈黙が常態化したとき、その土台はどこまで耐えられるのか。

トークショーは止まり、また動いた――私たちは独裁にどれほど近い?

9月17日、番組の親会社ディズニーが放送停止を決定。発端はキンメルの“ジョーク”だった。番組は6日後の9月23日に復帰したが、権威主義の下で育った多くの華人には既視感のある光景だ。

『NYT』が伝えたテキサス在住の華人弁護士は、「深夜番組の司会者がまだ大統領をいじれるうちは、アメリカの民主主義は安全だ」と肩をすくめたという。厳格な検閲社会で育った人々にとって、寝る前に“権力者を茶化す”深夜番組はまさに自由の象徴だったからだ。だが、ひと言の冗談で放送が止まる――その寒気を彼らはよく知っている。習近平体制を経験した人々が語るのは、自由は見えにくいところから削られ、やがて沈黙が当たり前になっていくという現実だ。

元中国の調査記者・張文敏は、否定的報道でたびたび国安当局に脅され、いまは米国に移った。「独裁から抜け出した者ほど、自由が少しずつ侵食される感覚に敏い」と言う。

『NYT』は、中国、インド、イラン、ロシア、トルコ、ベネズエラなどで、コメディアンや放送局、記者、漫画家が沈黙させられてきた現実を挙げる。そこで学ぶ教訓は一つ――政権やその取り巻きを辱める表現は許さない、ということだ。 (関連記事: 台湾海峡戦争をどう防ぐか 米シンクタンクがトランプ氏に提言:米中は「歴史的妥協」を、台湾には「米軍支援は自明ではない」と明言せよ 関連記事をもっと読む

メディア掌握へ歩を進めるトランプ

同紙は、トランプが“強権的リーダー”の振る舞いを示してきたと論じる。批判的なテレビ局の免許剝奪をちらつかせ、公共放送の予算削減を唱え、M&Aに介入する一方で、親和的メディアは厚遇する。情報とメディアの掌握は、民主主義の後退研究で“初期段階の定石”とされ、その先には異論や政敵、一般市民への圧迫が続く。もちろん現時点で、独裁国家のように批判者を即座に投獄・失踪させ、新聞やテレビ網を即時閉鎖したわけではない。

だが9月19日、トランプは自身の政権に対する「否定的報道は違法だ」とまで発言した。エプスタイン事件の報道をめぐり、大手紙に名誉毀損訴訟を起こした件も記憶に新しい。言論の自由を掲げる国で、国家元首が“自分が認める言説だけ”を求める――矛盾は明白だ。

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