《ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)》の中国総局長、魏玲玲氏は27日、トランプ政権との高官往来で土台を築いた習近平国家主席が、次の段階としてトランプ氏から「台湾独立に反対する」との明確な表明を引き出すことを狙っていると報じた。目的は台湾を国際的に孤立させ、最終的に「一つの中国」を既成事実化することにある。米中首脳会談が近づく中、トランプ氏が1年以内の米中貿易合意を急いでいるとの見方が北京側にあり、これを目標前進の好機と捉えているという。
同紙によれば、習氏は2012年の就任以来、台湾統一を「中国の夢」すなわち民族復興の中核に位置づけ、3期目に入ってからは「統一は不可避」であり外部勢力の干渉は許容しないと繰り返してきた。関係者によると、ワシントンの「台湾独立は支持しない」という従来の表現ではもはや不十分で、これは北京を一定程度なだめる一方、米国の曖昧な「一つの中国」政策――北京の台湾に対する主張を「認識はするが是認しない」という枠組み――に収まるものだとの受け止めがある。
習氏にとって、「支持しない」と「明確に反対する」の差は、米国が北京と歩調を合わせて台湾の主権に対抗するかどうかに直結する。こうした転換は、国内での権力基盤の強化にもつながるとの見方だ。他方で、トランプ政権はバイデン政権期の文言を踏襲しておらず、米国務省報道官は「いかなる側による一方的な現状変更にも反対する」と述べるにとどめ、「台湾海峡の平和と安定に対する最大の脅威は中国だ」との認識を示した。
関係者の話として、習氏はトランプ氏から対台政策の修正を引き出せると見込んでいる。北京はトランプ氏が経済ディールの妥結を急ぐと判断しており、米側のカウンターパートとの協議では、中国政府の外にいる政策助言者が「米国は台湾独立に反対すると公式に表明すべきだ」と主張したという。オバマ政権の国家安全保障会議(NSC)で要職を務めたジョージタウン大学のエバン・メデイロス氏は、「ワシントンと台北の間に楔を打ち込むことは、北京にとって台湾問題を前に進める“聖杯”だ」と指摘。台湾の自信を揺さぶり、北京の台北に対する影響力を強めると述べた。さらに同氏は、今後の米中首脳往来を、習氏が台米の距離を広げる絶好の機会とみなす公算が大きいとも語った。
在米中国大使館の劉鵬宇報道官は声明で、「中国は米台間のいかなる形の公式往来や軍事的関係にも断固反対する」と表明した。 (関連記事: 李忠謙コラム:トランプ・習近平会談前に 米学者が警告「中国を過大評価するな、台湾を過小評価するな」 | 関連記事をもっと読む )
WSJによれば、トランプ氏と習氏がTikTokの米投資家への売却に向けた取り決めを進めたことが、高官級の対話再開に道を開いた。両首脳は韓国でのAPEC首脳会議に合わせた会談を検討しており、2026年初頭のトランプ氏の訪中、同年12月の習氏の訪米案にも言及がある。ただしホワイトハウスは、これらは依然として初期調整段階にあり、トランプ氏の訪中は貿易協力やフェンタニル原料の流通抑制での中国側の対応次第だと説明した。一方で、米台関係は不確実性が増しているとの見方も広がる。