ハッカーが800ページ超の極秘文書を流出 ロシアが中国空挺部隊を訓練 中露軍事協力の深化で台湾に警戒

2024年12月、習近平中国共産党総書記(中央軍事委員会主席)がマカオで新行政長官の就任式に出席し、駐マカオ人民解放軍部隊を視察した場面(AP通信)
2024年12月、習近平中国共産党総書記(中央軍事委員会主席)がマカオで新行政長官の就任式に出席し、駐マカオ人民解放軍部隊を視察した場面(AP通信)
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ハッカー組織により取得された800ページ超の秘密文書が、米紙《ワシントン・ポスト》など複数の海外メディアで公開された。文書には、ロシアが中国人民解放軍の空挺部隊に必要な装備と専門訓練を提供し、装甲車両の空輸技術を共有することに同意したと記されている。シンクタンクは、中露の軍事協力が一段と深まる恐れがあるとして、台湾の安全保障環境に与える影響に警鐘を鳴らしている。

この800ページに及ぶ文書は、ハッカー集団「ブラックムーン(Black Moon)」が入手し、《ワシントン・ポスト》の審査を経て、英王立統合軍事研究所(RUSI)が独立検証を行った。文書は、ロシアが2024年10月に中国側へ以下の専門装備を供与・販売することに同意したと示している。

BMD-4M 水陸両用の軽装甲戦闘車:37両

Sprut-SDM1 自走対戦車砲:11両​

BTR-MDM 空挺装甲兵員輸送車:11両

主要装備の契約額は初期評価で5.84億ドル規模とされ、高高度の重貨物降下用に設計された専門エアドロップシステムも含む。文書には度重なる交渉経緯も記録されており、中国側が装備の迅速な納入、完全な技術文書の提供、そして中国製ソフトウェアや電子機器、通信・航法システムと互換性のある武器設定への調整を求めたことが明記されている。

    ロシアの「戦場経験」を取り込む

    合意には、解放軍空挺部隊が両国領内でロシアの専門家から訓練を受ける枠組みも含まれる。内容は、実戦下での各種兵器や指揮統制(C2)システムの運用法などに及ぶ。文書は、北京がロシアの優位分野である“実戦経験を持つ空挺部隊”から、専門訓練と技術を獲得しようとしている実態を示すものだ。

    研究者は、これらの合意が北京の近代軍建設を後押しし、習近平国家主席が米軍に匹敵しうる、あるいはそれを上回る軍事力を志向していることの一端を示すとみている。秘密協定は、中露の軍事協力が象徴的な合同演習の段階を超え、相互運用性の高いシステムや貴重な実戦ノウハウを共有する次元へ移行していることを浮き彫りにし、台湾海峡の現状と地域安保への懸念を強めている。

    中共2025年舉行抗戰勝利80周年北京大閲兵。(美聯社)
    2025年、北京で開催された「抗日戦争勝利80周年」軍事パレード。(AP通信)

    英国王立ユナイテッドサービス研究所(RUSI)は、中露の一連の協力が“準同盟”とも言える関係深化を示し、モスクワが北京と共に「新国際秩序」の構築を志向している兆しだと指摘。シニア・リサーチ・フェローのジャック・ワトリン氏は、もし台湾海峡で有事となれば、ロシアの石油・天然ガス、そして巨大な軍需産業が中国の「戦略的後方」になり得るとの見方を示した。

    最新の報告では、今回の訓練が解放軍空挺部隊の機動力を高め、台湾、フィリピン、さらには地域の島嶼国に対する「攻撃的選択肢」を増やす可能性が指摘されている。 (関連記事: 中露の極秘軍事協定が流出 プーチン氏、中国の台湾侵攻演習支援か 8年越し計画の存在明らかに 関連記事をもっと読む

    台湾への含意

    米ブラウン大学で中露軍事を研究するライル・ゴールドスタイン氏は、中国側が「紛争初動の数時間で、小規模かつ装備の整った部隊をヘリや輸送機で台湾に投入することを不可欠とみている」と説明。中国は第二次大戦のノルマンディー上陸作戦を徹底研究しており、精強な空挺部隊なしに同種の作戦を遂行すれば失敗リスクが高いことを十分認識しているという。

    1944年ノルマンディー上陸作戦、上陸艇から前方を見た米軍。(AP)
    1944年、ノルマンディー上陸作戦で上陸用舟艇から前方を望む米軍兵士。(AP通信)
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