近年、台湾と日本の交流はますます緊密になりつつあり、両国政府は友好な関係を築こうとする意欲を示している。しかし、台湾と日本の関係にはいくつかの波乱が避けられない。例えば今年、大阪で開催される2025年万博では、「台湾館」の名称が許可されないという事態があった。これについて、日本に留学経験があり、東京大学で教える学者は、台湾が日本の立場を理解し、日台関係が最終的には中国、そして両岸関係の影響を受けざるを得ないことを認識するべきだと述べている。
東京大学東洋文化研究所の特任研究員林泉忠氏が、国立清華大学での講演で、「台日関係と中国要因」をテーマとし、個人の経験と学術的実務経験から、今年注目されている大阪万博の「台湾館」に関する問題について、「台日関係」「中日関係」「両岸関係」の3つの側面で語った。講演には数十名の学生と台湾・日本のメディア関係者が出席した。
台日交流は中国要因を避けられない
林泉忠氏は、台日関係には「中国要因」が存在するとし、中日関係において台湾問題は北京が中日関係の「核心問題」と見なしていると指摘する。また、両岸関係の状況をも影響し、複雑な三角関係の動的なひずみを形成している。中国側は台日関係を常に注視しており、「歩み寄る」外交戦略を取るため、日本側の台湾に対するあらゆる行動が中国側に高く注意され、介入される可能性がある。そのため台湾は台日関係の考察において、この点を考慮する必要がある。

東京大学特任研究員の林泉忠氏(左)が、毎週清華大学の日本人教授小笠原欣幸氏の招きで、清華大学で特別講演を行った。杜宗熹/撮影
日本の立場から、林泉忠氏は、安倍晋三元首相の時代には台日関係が大きく進展したと述べる。安倍氏は台湾に特別な感情を持ち、「心から台湾を愛し、台湾を大切にしている」という。しかし、他の日本の指導者にも同様の状況を求めることはできない。しかし現任首相の石破茂氏は、中日関係における役割について様々な解釈があるが、実際には「友台」な首相である。
林泉忠氏は、日本側は北京と国交を結んだ際の約束を厳格に守り、北京の「一つの中国」という表現を尊重しているため、台日が非公式かつ実務的な民間交流であっても、日本外務省の対中および対台政策の範囲から離れない。これにより、「日本を尊重するために(台日関係を考える際には)、中日要因を考慮する必要がある」と述べる。
また、日本の国会議員田中早苗氏は4月7日に自身のソーシャルメディアで、国防部副部長柏鴻輝氏が4月初に日本を訪問したことを明らかにし、これらの動きは防衛大臣の中谷元氏が決定できるものではなく、さらに進んで石破茂氏本人の承認を得たものかもしれないと林泉氏は推断している。

学者林泉忠は、石破茂氏(左)が実際には「友台」な首相であると見ている。(日本首相官邸官網)
講演の中で林泉忠氏は、民進党が政権を取ると台日関係が良くなる印象があるという外界の見解があるが、国民党との関係も悪くないと指摘した。かつての蒋中正元総統の時代から、日本には最良の親友を派遣し、麻生太郎元首相と台北市長の蒋万安の交流、そして馬英九元総統が国内活動において日本の311地震災害者のために募金を行ったことなどを見ると、「国民党と日本の関係は民進党と比べて決して劣っていない」と述べた。
また、「自民党が国民党を重視していない」という風説に対して彼は同意しないという。2014年に中央研究院で開催された講演では、馬英九元総統が台日関係を「史上最高」と評した。また2007年に国民党主席を務めた際には、自身が「反日派ではなく友好派」であるとNHKのインタビューに応えた経験を挙げ、台湾と日本の友好は政党を超えた民間の共通認識であると述べた。
さらに、2013年に安倍晋三元首相が馬英九政権と「台日漁業協定」に署名したのは国民党が政権を握っていた時期であり、林泉忠氏はこれが安倍政府の「高瞻遠矚」と評価した。これは台湾漁民に何らかの譲歩を施し、台湾が実質的に「保釣運動」を行わないようにするためのもので、国民党と馬英九政権時の台日関係が必ずしも悪くないことの証だと述べる。
しかし、彼はまた、日本が台湾に友好的であることには、ただ中国が反日的になった時、台湾がより友好的であることだけでなく、日本が台湾を日本政府の中国に対する牽制カードとして見ている可能性もあると考えている。これは台湾政府が過去の戦争の歴史問題を外交問題として使わず、現在の外交問題に対処するためでもある。しかし、台日関係の主導権は依然として東京にあり、台北ではない。日本側は「非実務的な民間交流」の立場を変更することはないという。言い換えれば、林泉忠氏は台日関係の発展は一定の程度であり、必ずしも中方が考えるように中日関係から従わなければならないわけではないが、過去に中日関係が悪化した際には台日関係の進展が困難だったと指摘している。

東大學者林泉忠は、日本前首相麻生太郎(左)と台北市長蔣万安の関係を例に挙げた。(柯承惠撮影)
大阪モデルが将来の基準となる可能性
林泉忠氏は「風傳媒」の独占インタビューで、日本政府の今回の対応は過度に慎重であると感じているが、それにもかかわらず、大阪万博で「台湾館」が出現せず、「台湾」の名称での参加もできないというモデルが、将来の台湾が国際的な大型イベントに参加する際に北京が他国に従うことを要求する基準となる可能性があると懸念を示した。これは真に懸念すべき点であると述べた。
「風傳媒」に対して、林泉忠氏は2010年の上海万博、2015年のイタリア・ミラノ万博で「台湾館」が現れたのは、主に馬英九政権時代の両岸関係が良好であったため、台湾が多くの国際的なスペースを得ることができたためであると解説した。日本政府がこの際に友好的な立場を示そうとするなら、その時期はより「都合が良い」とした。つまりいわゆる「両岸関係が良ければ、台日関係も良い」ということである。
しかし、相対的に言って両岸関係が悪化すると、中国は日本の台湾に関する事務に「歩みを進めている」ため、日本側も同様に「一歩ずつ進んでいく」戦略で対応するしかない。民進党政権が続く中、2021年のドバイ万博では、台湾は民間企業の名でしか参加できなかった。今年の大阪万博では、日本側の立場はさらに「一歩退いた」ものであり、名義上「日本の会社」としてではなく、館内で台湾に関連する言葉を公開することもできないという状況である。
林泉忠氏は北京が東京に対する外交ニーズが日中双方の関係の主要な要素であるが、日本外務省と他の部門は今回の大阪万博の台湾館を非常に慎重に扱っていると分析した。これは外務省の思考の慣性から来ている可能性がある。また、日本側は中国の官員が大阪万博のイベントに出席を拒否する可能性も懸念しているという。
また、当初台湾側は「台湾館」といった名称を使用しなかった条件で、民進党政府が経済部長の郭智輝を開幕式に出席させたいと考えていたが、日本側は最終的に同意しなかったという。しかし、日本側は郭智輝が個人の立場で訪れることについては排斥しないと思われる。彼はさらなる提案として、蔡英文前総統が個人の立場で日本を訪問し、大阪万博を訪れることを推奨し、日本政府はこれに反対しないだろうと述べた。