インド「日本超え」は時期尚早!? 飛び出した”世界4位”宣言の真実

2025-05-27 18:36
インドは膨大な若者を抱えており、この人口ボーナスは将来の経済成長にとって極めて重要だ。写真は5月15日、インドの国旗を持ち、インドを支持するスローガンを叫ぶ市民たち。(AP)
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インド国家転換研究所(NITI Aayog)のB.V.R. スブラマニアムCEOは5月24日、第10回NITI Aayog理事会に出席し、「わが国の経済規模は4兆ドル(約626兆円)に達し、インドは今や日本を超えて世界第4の経済大国だ」と公に述べた。その場で国際通貨基金(IMF)のデータを引用してこれを証明したという。

この発言はすぐにインドの主要メディアの見出しを飾り、経済ランキングの歴史的な変化がすでに起こったかのような印象を与えた。しかし、国際通貨基金(IMF)が発表した最新の4月のデータを振り返ると、この「追い越し」はまだ準備段階にあることがわかる。

インドとIMF、GDP統計の時間基準に差異

IMFが2024年4月に発表した「世界経済見通し」(World Economic Outlook)レポートによると、2024年時点での日本の名目GDPは4兆260億ドル(約630兆円)、インドは3兆9090億ドル(約612兆円)である。2025年にはインドの名目GDPがさらに成長して4兆1870億ドル(約656兆円)に達し、わずかに日本の4兆1860億ドル(約656兆円)を超えるだろうと予測されている。

なぜ「インドが日本を超えて世界第4の経済大国になった」というスブラマニアム氏の発言に問題があるのか。答えは上記の統計データそのものではなく、時間基準の解釈の差にある。IMFは会計年度でインドのデータを算出し、その期間は当年4月から翌年3月までとしている。これに対し、日本を含む多くの国々は暦年に基づいて算出している。

CNBCTV 18の報道によると、これはインドの2024-2025会計年度がIMFレポートでは「2024年度」(2024年4月から2025年3月)として示されていることを意味し、インド政府はこれを「2025年度」と表現している。

この技術的な差異は、「インドが日本を超えて世界第4の経済大国になった」という発言が時期尚早であることを浮き彫りにしている。IMFによると、インドのGDPが日本を初めて超える時期は「2025年」で、スブラマニアム氏とインドのメディアはすでに超えたと誤解しているが、実際にはこの歴史的な超越は2025-26会計年度終了後(すなわち2026年3月)に実現する可能性がある。

注目すべきは、インド国家統計局(NSO)が5月30日に発表予定の2024年から2025会計年度のGDPデータだ。これはインドが「実質的に日本を超えた」かを判断する重要な指標となるだろう。また、同国が実際の経済活動の面で政府の楽観的な見解と一致しているかを検証することにもなる

10年間で名目GDP倍増、経済改革が奏効

しかし、この10年間でのインド経済の進化は確かに驚くべきものだ。インドタイムズの報道によると、インドは2014年には世界第10位の経済大国で、名目GDPは約1兆9000億ドル(約298兆円)だった。2025年には4兆1000億ドル(約642兆円)を超えると予測されており、成長幅は2倍以上となることが示されている。これは構造改革、産業政策、市場開放が徐々に実質的な効果に転じていることを示している。 (関連記事: 中国製と別れ、Made in Indiaへ? iPhone産業チェーンがインドに移転、専門家が3つの懸念を分析 関連記事をもっと読む

米国政府による関税戦争の影響や世界の地政学的な混乱、経済の減速という背景があるにもかかわらず、IMFはインドを主要経済大国の中で成長が最も速い国と評価している。これはモディ政権の内政と投資戦略がプラスに働いていることは間違いない。インド中央銀行は2026年の経済成長率も楽観視しており、6.5%に達すると予測している。

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