習近平氏の「テック覇権」構想、中国製造2025は世界を飲み込むか?

2025年3月5日、中国のオーケストラメンバーが北京人民大会堂で全国両会(全人代、中国人民政治協商会議)の開幕式のリハーサルを行う。
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昨年、中国は2.5兆ドル(約393兆円)を超える商品を輸入し、そのうち1640億ドル(約25.8兆円)がアメリカからのものだった。巨大な人口と現在の経済レベルを考えると、中国が完全な自給自足を実現するのは容易ではない。だが、そんな中で掲げられた「中国製造2025」は、国家の経済基盤を強化する大黒柱となり、トランプ政権による対中関税政策に対抗するための切り札にもなっている。

『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』は21日、同計画の進捗と課題について詳しく取り上げている。

10年前、李克強氏が打ち出したこの国家戦略は、中国の製造業全体をハイテク化する大規模なアップグレード計画だ。WSJの記事は計画発表当初ではなく、米中貿易戦争の真っ只中、2018年の習近平氏のスピーチから話を始めている。アメリカによる技術供与の制限が強まる中で、「自力更生」が中国国内で強調されたタイミングだった。

その年の5月末、習近平氏は北京の人民大会堂で行われた中国科学院と中国工程院の会合に出席し、次のように述べた。

​「重要な核心技術は、待っても、買っても、頼んでも手に入らない。自らの手で握ってこそ、国家の経済安全、国防の安全、あらゆる分野の安全が保障できる。私たちは自信を強め、核心技術や先端技術、現代工学、革新技術でブレイクスルーを起こし、誰も歩いたことのない道を切り拓かねばならない。」

「基礎研究は科学体系の源。世界最前線を見据えて土台を築き、長期的な視点で井戸を掘る覚悟で挑む。成果を産業化にきちんとつなげて、技術の革新を国家発展の原動力にする。」

中国国家主席習近平。(美聯社)
​中国の国家主席・習近平氏(AP通信)

WSJによれば、「中国製造2025」は単なる産業政策ではなく、米国のテクノロジー封鎖に対抗するための重要戦略になっている。そしてその成果はすでに一部でアメリカを凌駕し始めているという。

たとえば、中国のEV(電動車)は世界市場を席巻し、AI分野ではOpenAIに匹敵するスタートアップが次々と登場。バイオ医薬の研究も進化し、工場では高度なロボットが稼働。貨物船の生産では世界シェアを握り、打ち上げた数百機の人工衛星が地球上をくまなく監視する体制も構築されている。加えて、食料・エネルギー自給率を高め、軍事近代化も継続中。これらがアメリカへの対抗力を裏支えしている。

製造業の強化によって、中国の外部依存度は確実に下がっている。パンデミック直後の2020年、中国は2.2%の経済成長を維持し、主要国の中で唯一プラス成長を達成。これにより、海外との接触を制限しても経済は成り立つという自信が生まれた。2023年には輸入額がGDPに占める割合が18%未満まで低下。10年前の22%から明らかに減っている。 (関連記事: 石破首相「中国の現状変更に強く警戒」 DSEI Japanで防衛装備協力の推進を明言 関連記事をもっと読む

習近平氏は、「社会主義制度と国家計画体制こそが未来の科学技術競争に勝つ最良のモデル」とも語っている。必要な資源を国家が集中的に投入できる点が強みだという。