黄仁勲氏と米シンクタンクが警鐘──中国と米国のAI戦争、「極めて僅差」 戦略の違いを徹底分析

2025-05-22 18:48
米半導体大手エヌビディアの創業者・黄仁勲氏(右)。中国のAI技術は、米国との差が「極めて近い」と語り、警戒感を示した。(写真/柯承惠撮影)
米半導体大手エヌビディアの創業者・黄仁勲氏(右)。中国のAI技術は、米国との差が「極めて近い」と語り、警戒感を示した。(写真/柯承惠撮影)
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トランプ米大統領は第2期目の政権発足以降、人工知能(AI)分野における先端技術の開発と推進を国家戦略の柱と位置づけてきた。今年4月には、AI利用に関する包括的な新指針を発表。連邦政府機関によるAI活用の基準や枠組みを定め、政府職員が使用可能なAIプログラムの種類と運用範囲についても明確にした。

一方、中国も世界のAI分野における主導権確保に向け、国家を挙げた取り組みを進めている。米ワシントンD.C.に拠点を置くシンクタンク「アトラス国際問題研究所(Atlas Institute for International Affairs)」が発表した最新報告書によれば、中国は今後5年以内に、AI分野で世界のリーダーとなることを明確な国家目標として掲げているという。

米中のAI戦略、根本から異なる方向性

2018年に設立されたアトラス研究所は、ハーバード大学やジョージタウン大学、ジョンズ・ホプキンス大学などの専門家により創設された非営利・非党派の政策研究機関で、国際問題、安全保障、新興技術政策などを主な研究分野としている。その報告書は米議会や国防総省、国家安全保障会議などでもしばしば引用されるなど、影響力の高いシンクタンクである。

今回の報告書では、米中両国が採っているAI発展戦略の「根本的な違い」が浮き彫りになっている。米国は、民間主導によるイノベーションを重視し、政府はそれを支える政策環境や規制の枠組みの整備に注力。一方、中国は国家主導の集権的なモデルを採用し、AIの研究開発から応用分野に至るまでを、政府が戦略的にコントロールしていると報告は指摘する。

「北京はAIを国家戦略の最優先事項と位置づけ、経済発展、軍事近代化、技術的自立の各目標に体系的に組み込んでいる」と報告書は記している。

ジョージタウン大学の安全保障・新興技術センター(CSET)による最近の研究報告も、米中それぞれの技術政策の構造的な差異と、それが将来的にもたらす影響を強調している。

同報告の主要執筆者であるウィリアム・ハンナス氏は、米誌『ニュースウィーク』の取材に対し、「我々は迅速かつ賢明に対応しなければならない。データセンターに数十億ドルを投資するだけでは足りず、より多様で競争力のあるイノベーション手法を確立する必要がある」と警鐘を鳴らした。

学界・産業界・軍を横断する中国のAIエコシステム

さらにハンナス氏は、アトラス研究所の分析とも一致する見解として、中国が学術界・産業界・軍の資源を総動員し、統合されたAIエコシステムを築きつつある点を挙げた。国家主導による集中体制の強みは、リソースを一点集中させて重要技術の課題を突破し、成果を迅速に実用化へと移行できる点にあるという。 (関連記事: インテルが台湾進出40年》新CEOが宣言「技術重視に回帰」 AI時代へ台湾との連携強化 関連記事をもっと読む

産業界の第一線からも警戒の声が上がっている。世界有数の半導体メーカー、エヌビディア(NVIDIA)の創業者兼CEOである黄仁勲氏は、米中間のAI競争に関して次のように言及した。

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