台湾・核三第二号機が17日をもって正式に廃止された。これにより、夜間の電力ピーク需要を補うため、台湾電力(台電)は蓄電事業者によるサービスに依存せざるを得なくなった。しかし、蓄電を用いた調整電力(調頻補助サービス)のコストは高く、台電の2024年事業予算報告では、1キロワット時あたりの調整電力コストが約49円に達し、他の発電手段を大きく上回っている。
台電は昨年、こうした補助サービスの調達に約357億円を支出したが、原発ゼロ体制となった今後はさらなる調達拡大が避けられず、関連コストは将来的に約490億円を超えると見られている。
台湾の蓄電産業は、2022年の全国的な大規模停電を契機に急成長を遂げた。経済部(経済省)は、2025年までに太陽光発電と蓄電を組み合わせた設備を50万キロワット(500MWh)導入する目標を掲げ、多くの企業が相次いで市場に参入。わずか1年で、「強化型動的調頻備転(E-dReg)」の申請容量は427万キロワットに達し、目標の8倍以上となった。
ただし、2022年末に台南で発生した太陽光発電をめぐる不正事案以降、再生可能エネルギー開発の進捗は鈍化。一部では、台電が運用する「電力取引プラットフォーム」の調頻備転サービスで“ゼロ元入札”という異常な状況も確認された。
国会(立法院)はこうした現状を踏まえ、台電に対して「補助サービスのコスト対効果を精査し、持続可能な価格管理策を講じるよう」求めている。
コスト高騰の現実と台電の対応
台電は一部の太陽光発電大手と「発電・蓄電一体型」電力供給契約を締結しており、これに基づき、毎日午後6時から少なくとも2.61時間の放電が求められている。この契約に基づく買電価格は、1kWhあたり9.68元に達する。これは他の電源に比べて非常に高い水準であり、台電にとって大きな財政的負担となる。
同社の113年度(2024年)予算案では、調頻サービス購入費用として前年の2倍にあたる約356億円を「送電費用-その他」項目に計上。2022年にはわずか約15億円程度だった支出が、短期間で急増している。

調頻補助サービスは、再生可能エネルギーの出力変動を補う役割を果たすもので、需給調整には多大なコストがかかる。原子力の廃止や再エネ比率の拡大に伴い、こうした調整コストの上昇は避けられず、将来的に約490億円を超える支出が常態化する可能性がある。
一方で、これらの調整需要は、蓄電事業者にとっては大きなビジネスチャンスとも言える。
安定供給へ投資の必要性 熙特爾(シーテル)の見解
蓄電事業を展開する熙特爾(シーテル)の財務責任者・張雅怡氏は、スペインで最近発生した大規模停電に触れ、「再エネの比率が高くなるほど、電力網は不安定化しやすい」と警鐘を鳴らす。台湾でも将来的に同様の事態が起こる可能性があるとし、電力の安定供給のためには蓄電への積極的な投資が不可欠だと強調した。