頼清徳総統が就任1周年演説 政府系ファンド創設など7つの政策を発表

賴清德総統は、政府主導で「政府系ファンドファンド」を創設し、国家レベルの投資プラットフォームを構築すると表明。官民連携によりグローバル市場への投資を進め、台湾経済を「内需と輸出の両立」へと転換する構想を示した。(資料写真/柯承惠撮影)
目次

台湾の賴清德総統は5月20日、就任1周年を迎えた記者会見で施政演説を行い、「逆風を転機に、着実な前進を」とのスローガンを掲げ、民主制度の下での団結と強靭性の重要性を強調した。演説では与野党協調の必要性を訴え、「国家安全簡報(国安簡報)」の提供による対話の意思を表明。さらに新たな国家ファンドの創設や産業支援、健康・環境政策など幅広いテーマに言及した。以下に、演説の主要ポイントを7つにまとめる。

1. ​政府系ファンド創設の狙いとは?

​賴総統は、政府主導で国家規模の「政府系ファンド(主権基金)」を創設し、民間の力を結集して世界市場への戦略的投資を進める考えを示した。
AI時代の到来を機に、台湾経済を「輸出依存型」から「内需とグローバル展開を両立させる二重軌道戦略」へと転換させるとし、国発基金の機能強化を通じて中小企業の革新と産業競争力の底上げも図る。

2.​対中変局と関税リスクへの対応 産業再生の道筋は?

米国の対中追加関税を背景に、台湾産業への影響が懸念される中、賴総統は五つの対応策を提示。「産業傾聴ツアー」の実施や、行政院による特別立法「安全・強靭性強化特別条例」の提出を明らかにした。
同条例により、歳計剰余4100億元(約1兆9680億円)を活用して雇用安定と産業支援を進め、さらに1500億元(約7200億円)を投じて国土安全や民生インフラの強靭化を図る。

3. ​健康台湾構想 健保改革とがん対策強化へ

新型コロナ後の社会課題に対応するため、政府は総額489億元(約2347億円)の「健康台湾深化計画」を始動。加えて、健保予算を712億元(約3418億円)増額し、がんの早期スクリーニング推進や新薬基金の設立、国家級防疫センターの設置などを進める。

賴総統は「健康な台湾の構築は、国家の強靭性と国際的な公衆衛生能力を示す基盤である」と強調した。

4.​気候変動対策 1兆元超の脱炭素投資を推進

気候変動への対応として、2030年までに1兆元(約4兆8000億円)を超える政府投資を行い、脱炭素への移行を図る。これにより、民間の5兆元(約24兆円)規模のグリーン投融資を誘導する狙いも示された。

今年はカーボンプライシング制度が施行され、PM2.5濃度の改善も報告された。六つの主要分野において20の減炭旗艦プロジェクトを推進し、2035年までに炭素排出38%削減を目指す。

5. 「国安簡報」の導入 与野党の安全保障協力を促す

賴総統は、現在の安全保障環境の変化を踏まえ、野党党首に対して国家安全に関する簡報(ブリーフィング)を実施する方針を明言。与野党が共通の事実に基づき議論を深めることで、政党間対立を超えた協力の基盤を構築するとした。

「自由な生活様式を守るには、民主的な対話と連携が不可欠」との認識を示した。

6.​対米通商交渉の現状と政府の基本方針

​台湾と米国による関税協議について、賴総統は「交渉は順調に進んでいる」と述べた上で、交渉における三原則を明確化した。
(1)いかなる産業も犠牲にしない、(2)国家利益を守る、(3)経済成長を促進する――。また、「迅速かつ秩序ある交渉」「行動に守りと利益の両立を図る」との戦略方針も示された。

7.​台湾がグローバル・テクノロジー中枢とされる理由

賴総統は、台湾が「シリコンアイランド」として国際的な注目を集めていると指摘。NVIDIAやGoogle、AMDなど世界的IT企業が台湾での投資を相次いで発表している現状を紹介した。

こうした動きは、台湾の技術力と民主的制度への信頼がもたらしたものであり、台湾がAIや半導体分野のグローバル中核として位置付けられていることの証だと強調した。

​編集:田中佳奈

台湾ニュースをもっと深く⇒風傳媒日本語版X@stormmedia_jp