日米両政府は第3回となる関税交渉を5月23日(米国時間)に開催する予定で、日本側は赤澤亮正・経済再生担当相が再び訪米する。今回の交渉では、米財務長官のスコット・ベッセント氏の出席は見送られ、代わって米通商代表部(USTR)のジェイミーソン・グリアー氏が協議を主導する見込み。交渉は段階的に進められる可能性があるとされている。
日米関税交渉再開へ 赤澤亮正氏が再訪米
日本の現代中国研究の専門家である愛知大学の加治宏基教授は、『風傳媒』の取材に対し、今回の交渉の背景には2019年に締結されたトランプ政権下の初の米日貿易協定があると指摘。米国が日本車への高関税を課さない代わりに、日本が米国産の牛肉・豚肉の関税を引き下げるという内容だったが、トランプ氏が再びホワイトハウスに戻って以降、新たな関税方針を推進し、これが過去の合意を実質的に反故にするものだと懸念されている。
また、加治氏は米中間の関税相互引き下げ(最大115%)が日米交渉に影響を与えるかについて、「むしろ米露関係の方が交渉に与える影響が大きい」との見方を示した。トランプ氏が中東諸国歴訪で2兆ドル規模の経済協定をまとめ、ロシアから距離を取るよう誘導したことは、ロシアのプーチン大統領をウクライナとの停戦交渉に引き戻す要因になり得ると分析した。

日本の存在感低下? 米国の貿易赤字に差
米国の対日貿易赤字は約700億ドルであるのに対し、対中貿易赤字は約2,960億ドルと、対日の4倍以上。加治氏は「経済重視で同盟軽視」の傾向があるトランプ政権にとって、日本の優先順位は低くなりつつあると指摘。今後の交渉でも日本の立場は厳しくなるとの見方を示している。
米価高騰と農相の失言が石破政権を直撃
共同通信の報道によれば、赤澤氏は20日の閣議後会見で「19日から米国現地で対面での実務協議を進めている」と述べ、外務省や経産省の関係者も交渉に加わっていることを明かした。今後、閣僚級の協議で合意に向けた道筋をつけられるかが焦点となる。
一方で、日米交渉の行方は、7月に控える参院選を前に石破茂内閣にとって大きな試練となっている。加治氏は「外交成果を期待する国民は少ないが、米価の高騰など生活に直結する問題が表面化すれば、選挙結果に影響を与える可能性はある」と指摘。すでに日本国内では、物価上昇や米国からの圧力に対する不満が高まっており、政府への対応強化を求める声が強い。
農相の江藤拓氏は18日、佐賀市での講演で「米は買ったことがない。支持者からたくさんもらうので、家の食品庫に売るほどある」と発言。生活苦に直面する国民感情を逆撫でする内容に、世論の反発が広がった。
石破首相は20日の会見で「江藤氏の続投方針に変わりはない」と明言したが、共同通信の世論調査(5月17〜18日)では、内閣支持率が27.4%と過去最低を更新。前回4月調査から5.2ポイント下落し、不支持率は55.1%に達した。

参院選・都議選を控え、政局不安加速の懸念
与党内では米価問題や農相の失言をめぐる不満が高まっており、6月の東京都議会選挙、夏の参院選を控えて、野党は攻勢を強める構え。政権与党にとっては、外交・経済・物価の三重苦が一気に噴き出す恐れがある。
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編集:梅木奈実
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