李忠謙コラム:米中貿易戦争停戦、全世界が注目 トランプ脅威に対して急いで譲歩する必要なし

2025年5月5日。米トランプ大統領がホワイトハウスのオーバルオフィスで2027年のNFLドラフトがナショナルモールで開催されると発表した。(AP)

米中両国は12日、関税を大幅に引き下げると発表し、90日以内に新たな貿易協定を締結することを目指すとした。この「チキンゲーム」で、果たしてトランプ氏と習近平氏のどちらが先に目を伏せるか、または貿易戦争の第一ラウンドを制したのは誰か、市場は米中休戦に興奮している。しかし勝敗の他にも、トランプ氏と交渉中の全ての国々は、両国が争う様子から何らかの教訓を得たようだ。

ワシントンのシンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)の経済プログラムディレクター、フィリップ・ラック(Philip Luck)氏は、減税措置は米国のインフレ圧力を和らげ、経済の不況入りの可能性を低下させ、「正しい方向への一歩」であると評価しつつも、米国の関税は依然高すぎ、輸入に依存する米国企業はコストを吸収したり、調達を延期したり、物価を引き上げたりせざるを得ず、物価上昇や商品不足、長期的な経済問題の種を撒いている、と指摘する。

ラック氏は、トランプ氏が全ての国に対して設定した関税は恒久的に引き下げられるわけではなく、90日間の猶予に過ぎないため、企業は長期的な調達や投資決定を行う際、依然として不透明な状況にあることを懸念している。関税政策の予測不可能な変動性を考慮すると、企業は米国や中国への資本投入に二の足を踏む可能性がある。特に、関税の約60%は米国の製造業が必要とする原材料や部品に対して課されており、米国内のサプライチェーンを傷つけるものであり、戦略的な優位性をもたらすことはない。

経済的な影響に加えて、ラック氏は米国の信用が徐々に失われつつあることを非常に危険な発展と考えている。トランプ政権は一度、各国に「報復措置を取れば結果を招く」と警告していたが、中国が強硬な立場を取った結果、関税率は「解放日」にトランプが宣言した34%よりも低くなった。トランプ氏の世界各国への脅しは空砲であることが証明され、米国の信用は低下したと指摘。ラック氏はまた、「一貫性やフォローアップが欠けた威勢の良い貿易政策は無効であり、逆効果にもなる」と警告している。

中国が米国の脅威に対し強硬な姿勢をとったことで良い結果を得たことが、他の多くの国々に自身の対応戦略を見直させた。外交関係協議会の研究員リュー・ゾンユエンは、米中交渉がトランプ政府の弱点を露呈したことを指摘する。彼らは米国企業によってかけられる圧力を無視できず、米国のサプライチェーンは依然として中国に依存している。たとえトランプ政府の官僚が貿易交渉を「戦略的なデカップリング」と位置付けても、事実では達成できていない。 (関連記事: 李忠謙コラム:AIテクノロジーは自由民主主義の味方か、それとも専制政権の共犯者か? 関連記事をもっと読む

元米国貿易代表で、現在シンガポールのユソフ・イサア南アジア研究所(ISEAS)の客員研究員を務めるスティーブン・オルソン氏は、米中休戦後、トランプ氏との交渉スタンスはすでに変化しており、皆がトランプの手の内を見透かしていると考える。カナダ投資研究会社のチーフストラテジスト、マルコ・パピック氏も、多くの国が中国を手本に、トランプ氏との交渉の正しい方法は「堅持し、冷静にして、彼を屈服させること」だと考えるようになっていると言う。