「日本国債ショック」再び?20年債入札が歴史的低調、長期金利急騰で市場に動揺広がる

2025-05-21 15:47
日本公債市場のこの惨状は、グローバルな債券リスク再評価の始まりに過ぎないかもしれない。(AP通信)
日本公債市場のこの惨状は、グローバルな債券リスク再評価の始まりに過ぎないかもしれない。(AP通信)

米国の信用格付け引き下げに市場の注目が集まる中、実際に債券市場を揺るがした衝撃は日本から発生した。日本財務省が5月20日に実施した20年物国債の入札は極めて低調な結果に終わり、投資家心理に大きな打撃を与えた。

入札倍率は2.5倍と、2012年以来の最低水準を記録。また、平均落札価格と最低落札価格の差である「テイル(Tail)」は1.14と1987年以来最大となった。これを受けて長期ゾーンの国債は全面安となり、40年債利回りは過去最高となる3.59%に急騰した。

日銀の後退で浮き彫りとなる「買い手不在」の現実

今回の20年債の発行規模は約1兆円だったが、応札は低調で、先月の2.96倍から大きく低下。さらに市場関係者を驚かせたのは、「テイル」が1.14にまで拡大した点だ。これは投資家の買い意欲が大幅に減退していることを示し、債券のリスクプレミアムが急速に上昇していることを意味する。

この結果を受け、10年債利回りは一時1.525%、20年債は2.555%と2000年以来の高水準に上昇。30年債、40年債も利回りが上昇し、日本政府の長期的な財政持続性に疑念が広がっている。

長年にわたり、日本銀行は低金利政策を維持するために国債を大量購入しており、市場に出回る国債の52%以上を保有している最大の買い手だ。しかし現在は量的引き締め(QT)を進めており、買い手が不在となる中で、長期国債市場が不安定化している。

政策修正の可能性も 日銀の今後に注目

報道によると、日銀は今後、QTの進捗状況について市場関係者と意見交換を行う予定だ。一方、政治的要因も政策に影響を与えそうだ。国会ではインフレ対策としての財政支出拡大案が議論されており、夏の参議院選挙を控えて税制改革も争点となっている。

現在、日銀は毎四半期に4,000億円ずつ国債購入を削減しており、2026年の第1四半期には月額2.9兆円にまで縮小される見込みだ。しかし、長期金利の急上昇が続けば、再び金融緩和へと転じる可能性もあり、イールドカーブ・コントロール(YCC)の再導入やマイナス金利の復活といった措置が検討される余地もある。

石破茂首相は、5月20日の国会で「日本の財政状況は非常に厳しく、ギリシャより悪い」と述べ、公債発行による減税財源確保に否定的な姿勢を示した。首相はまた、「金利は政府の判断対象ではないが、現実には上昇する金利の世界に直面している」と危機感をあらわにした。

日本債市場の変調がもたらす世界的リスク

今回の債券市場の混乱は、日本の金融システムの脆弱性を浮き彫りにすると同時に、世界市場に対しても大きな不確実性を投げかけている。日本は世界有数の経済大国である一方、債務残高はGDP比で250%と突出しており、金利上昇によって政府の債務返済負担が急増すれば、国際資本の流れやリスク資産の評価にも大きな影響が及ぶ。

加えて、米国も格付け会社ムーディーズによって信用格付けが引き下げられたばかりであり、米日両国の債券市場が同時に揺れれば、機関投資家にとって資産配分の再検討を迫られる事態となりかねない。

専門家は、6月中旬の日銀金融政策決定会合に向けて、債券購入戦略の方向性が注目されていると指摘。特に、国債市場の流動性指標は2月のマイナス13から5月にはマイナス44にまで悪化しており、機能不全の兆しが強まっている。今回の日本国債市場の急変は、グローバル債券市場全体のリスク再評価の幕開けとなる可能性がある。 (関連記事: 新たな農相に小泉進次郎氏を起用へ 米価対策に注目集まる 関連記事をもっと読む

中国語関連記事

編集:梅木奈実

世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp

最新ニュース
北京観察》NVIDIAが上海にAI研究拠点を設立か 台湾本部への影響懸念も
視点》「個性」が制度を揺るがす──蔡英文から頼清徳へ、変わる台湾政治の統治美学と対立の構図
AIが「心の相談相手」に?広がるチャットボット依存と自殺トラブルの現実
電気代1kWh=49円!?原発ゼロ台湾に忍び寄る「蓄電バブル」
台湾・民進党、中国スパイ関与の党員5人を除名 「台湾を傷つける行為は容認せず」
新たな農相に小泉進次郎氏を起用へ 米価対策に注目集まる
台湾で3人死亡の車暴走事故に新展開?78歳運転手、事故直前に市街地で謎の迂回
台湾海峡解読》亜亜事件の波紋──日本メディアで議論沸騰、「武統支持の大陸配偶者」から見える台湾言論空間の限界
在韓米軍司令官「韓国は中国の玄関口に浮かぶ空母」 台湾有事で韓国安保に懸念の声広がる
頼清徳総統が就任1周年演説 政府系ファンド創設など7つの政策を発表
非AI半導体の需要回復に遅れ──日本の新設ウエハー工場、半数が量産に至らず 市場シェアは過去40年で最低水準に
頼清徳総統の支持率が急落、背景にある「ある人物」の存在とは 日本の小笠原教授が指摘、民進党の罷免戦略にも影響か
舞台裏》台北市がNVIDIA本社を勝ち取った理由──蔣萬安市長と“極秘チーム”の存在
日米関税交渉が第3ラウンドへ 赤澤亮正氏が再訪米も「日本の存在感に陰り」?
台湾・高一生家族の「音楽と人権」の物語、東京で展覧会 白色テロを越えて響く自由の歌
櫻井翔が台湾総統に単独インタビュー 頼清徳氏「中国の脅威は世界の問題」日米に協力呼びかけ
任天堂「スイッチ(Switch)2」、主要チップはサムスン製に 6月発売予定で生産体制強化
10月、松江の「彩雲堂」で国際フォーラム開催予定 台仏と連携し食文化発信
「ロシア制裁」について避け続ける、エコノミスト誌が批判:トランプはプーチンに対し異常なほど軟弱だ
島根県最年少県議・中村絢氏が台湾訪問 出雲神話で文化交流 10月には松江で国際フォーラムも
かつてない警告! 馬英九:アメリカは賴政府の統治能力を疑い始めており、「抗中」路線を停止すべき
李忠謙コラム:米中貿易戦争停戦、全世界が注目 トランプ脅威に対して急いで譲歩する必要なし
ウクライナ苦難、アメリカは見捨てるのか? トランプがロシア・ウクライナの交渉に介入せず、ゼレンスキー「唯一の受益者はプーチンだ」
台湾・小学校前で重大事故 78歳運転手が暴走し15人死傷 頼清徳総統が遺族に哀悼
台湾の小学校前で車が突入 子ども含む12人負傷3人死亡、「また高齢運転」に怒りの声
バイデン前大統領、前立腺がんが骨髄に転移 再選断念の背景に健康問題か
埼玉・三郷市小学生ひき逃げ事件 42歳中国籍の運転者と同乗者逮捕
米中対立は世界の分水嶺に──台湾は孤立しているのか?ハーバード大教授が警鐘
特別インタビュー》中国人科学者の“帰国ブーム”? IBM退職エンジニアが暴く「民主主義の灯台」の暗部:「中共は独裁だが現実的」
ワールドマスターズゲームズ2025が台湾・台北で開幕 感動の開会式に各国選手が歓声「一生に一度のスター体験」
インタビュー》カナダ高級ホテルブランド・フェアモント、日本進出 総支配人「台湾の旅行者と市場に期待」
視点》非核家園の現実──理想から迷走へ 台湾のエネルギー転換に見る誤算と限界
野党が総統罷免を提案 頼清徳氏「憲法に基づく権利、尊重せざるを得ない」
AI半導体大手NVIDIA、台湾新拠点を正式発表 台北「北士科T17・T18」に注目集まる
中国が米国から密かに資金引き上げ?英国が米国債保有国第2位に躍進、中国は第3位に後退 FT:北京は外貨準備の多様化を加速
中国製と別れ、Made in Indiaへ? iPhone産業チェーンがインドに移転、専門家が3つの懸念を分析
インタビュー》中国の半導体技術が急追? IBM元技師が語るTSMC米国進出:「米国制度の重大な欠陥」
台湾でCOMPUTEX2025開幕へ──AI革命の中心に、次世代技術が集結
賴清德総統「米台は対等な友人関係」 関税交渉での姿勢示す
台湾の民間団体、WHO加盟を要請 ジュネーブで23年連続アピール
東京で輝く台湾出身ネイリスト──「NeiruNailStudio」Cheryl氏、美と健康を両立するネイルサロンを目指して
【大阪】全身びしょ濡れ必至―USJ「NO LIMIT!クール・サマー」7月開幕へ、水のアトラクション拡充
大阪・関西万博》「うどん打ち体験」ブース登場 老舗「杵屋」が次世代向け食育イベント開催へ
南投の秘境、日本ではまだあまり知られていない「必訪の絶景地」―CNN推奨「生涯に一度は訪れるべき」最強スポット
30歳前に「女社長」に―台湾出身・Nanakoさん、日本でファッションの夢を実現
日本・台湾・オランダの多文化背景を持つ歌手Pey-ling、歌声でさらなる感動を届けたい
【地域資源×花の循環】高輪ゲートウェイで新たな取り組み 環境と暮らしをつなぐフラワーイベント開催
電通、消費者心理を6タイプに分類 新マーケティング支援を展開
USJ「ミニオン・パーク」拡張へ、世界最大級のミニオン体験が進化 来夏オープン
台湾海峡有事で日米はどう動くか 日本の識者が警鐘「トランプ氏が台湾見捨てる恐れ」