台湾・新北市三峽区で発生した重大交通事故に関し、新たな疑問が浮上している。78歳の男性が運転する普通乗用車が突然歩行者の列に突っ込み、3人が死亡、12人が負傷した事件について、ネットユーザーらが事故前の監視カメラ映像をつなぎ合わせたところ、運転手が「ロードレイジ(運転中の激高)」を起こした可能性があるとの推測が広がっている。さらに検察と警察が捜査を進めた結果、事故当日の走行ルートに不自然な迂回が確認され、事故現場も帰宅経路には含まれていなかったことが判明した。事故の背後に他の動機があったのではないかとの見方が強まっている。

ECU解析で事故直前の運転行動を復元へ
この事故は5月19日に発生。78歳の余氏は国慶路交差点で左折しようとした際、中央分離帯に接触。その後、後退して後続車に衝突し、さらに急発進して国成街へ進入。そこから歩行者やバイクに次々と突っ込み、2人の女子学生と1人の女性ライダーが死亡、12人が重軽傷を負う惨事となった。
『三立新聞網』の報道によれば、監視映像からは、余氏の車両が交差点に進入する際に一切減速せず、そのまま歩行者に向かって突進する様子が確認されており、最終的に中央分離帯に激突して停車。車両前部は激しく損壊していたという。
余氏は現場で重傷を負って意識を失い、現在も集中治療室で生命の危機にある。複数箇所の骨折に加え、胸腹部の内臓にも深刻な損傷があり、緊急手術を受けたものの依然として予断を許さない状況だ。
当初の調査では、信号無視、速度超過、時間帯規制違反など複数の交通違反が関与していたと見られており、検察と警察は20日、交通安全委員会の専門家とともに事故車両のECU(車載コンピュータ)を分解。アクセルやブレーキの操作履歴をもとに、事故直前の運転行動を復元する作業を開始した。
不可解な走行ルート、動機に別の可能性も
余氏の妻はメディアの取材に対し、「夫は糖尿病や泌尿器系の慢性疾患を抱えていたが、健康状態は悪くなかった」と説明。一方で、突然の体調不良が事故を引き起こした可能性については明言を避けた。
複数のネットユーザーやインフルエンサー「Cheap」氏などは、事故前の映像をもとに、余氏が「ロードレイジ」を起こした可能性を指摘。分離帯に衝突した後、前方を走行していた女性ライダーに怒りをぶつける形で加速し、最終的に暴走に至ったとの推測を示している。
しかし、検察と警察の調査で明らかになったのは、事故現場が余氏の通常の帰宅ルートには含まれておらず、当日も直帰せず三峽区内を何度も迂回していたという事実だった。なぜ日常とは異なるルートを走行し、事故現場へと向かったのか、その背景や動機については今後の捜査で解明が待たれる。
『聯合新聞網』によれば、地元住民の証言では、余氏は普段から環境ボランティアとして三角公園の清掃などを担当しており、その公園がある「龍恩里」から事故現場の「學成路」は近い距離にあるという。このため、当日は公園に戻るためにUターンしようとした可能性があるが、誤って方向を判断し左折。中央分離帯に接触し、後退時に後続車と衝突したことが、今回の事故につながったのではないかとの見方もある。
編集:梅木奈実 (関連記事: 台湾の小学校前で車が突入 子ども含む12人負傷3人死亡、「また高齢運転」に怒りの声 | 関連記事をもっと読む )
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