東京で見つけた自分らしさ──明太子さん、13年半の模索と成長の記録

2025-06-07 18:22
日本在住13年半を超える著名作家・明太子さんは、現在東京で暮らす自由業のライター、編集者、そして母親でもある。(写真/黃信維撮影)

東京で暮らして13年半を迎える作家の明太子さん。現在はフリーのライター・編集者として活動しながら、一児の母として日々を送っている。もともとは雑誌編集者として働いていたが、その後日本に移住。東京での生活や子育て、異文化との向き合い方について発信を続けてきた。

日本在住13年半を超える著名作家・明太子小姐は、現在東京で暮らす自由業のライター、編集者、そして母親でもある。黃信維
日本在住13年半を超える著名作家・明太子さんは、現在東京で暮らす自由業のライター、編集者、そして母親でもある。(写真/黃信維撮影)

台湾メディア「風伝媒」のインタビューでは、自身のこれまでの日本生活を「二重エンジンのライフスタイル」と表現。「日本社会への理解が深まる一方で、自分が本当に望む生き方も見えてきた」と語っている。

13年という歳月の中で、さまざまな壁を乗り越え、柔軟に対応する力を身につけてきたという彼女。必要なときには、自分を守る術も覚えた。そんな彼女は現在、第5作目となる著書の執筆に取り組んでおり、2025年中の出版を予定している。

日本在住13年半を超える著名作家・明太子小姐は、現在東京で暮らす自由業のライター、編集者、そして母親でもある。黃信維
日本在住13年半を超える著名作家・明太子小姐は、現在東京で暮らす自由業のライター、編集者、そして母親でもある。(写真/黃信維撮影)

来日当初は日本語が全く話せず、まずは語学学校で1年半学んで日本語能力試験N1を取得。しかし、実際の職場では言葉だけでどうにかなるものでもなかった。収入を早く得たいという思いから、外国人向けの雑誌編集部に入り、日本語に不安を抱えながらも、中国語と英語を活かして記事の執筆や編集に関わった。

生活拠点は、学術的な雰囲気が漂う落ち着いた地域。しかし、子どもが小学校に入学すると、文化の違いによる衝撃が次々と訪れた。特に大きな壁になったのが、スポーツチームでの教育観の違いや、いじめの問題。

彼女が比較的穏やかな子育てを心がけていたことが、周囲の保護者に疑問視され、ある母親からは公の場で激しく非難されることもあった。「競技に参加させている以上、親はもっと厳しくあるべき」といった価値観に衝撃を受け、この出来事は彼女と子どもに深い傷を残した。気持ちの整理がつくまでには約1年を要したという。

日本在住13年半を超える著名作家・明太子小姐は、現在東京で暮らす自由業のライター、編集者、そして母親でもある。黃信維
日本在住13年半を超える著名作家・明太子さんは、現在東京で暮らす自由業のライター、編集者、そして母親でもある。(写真/黃信維撮影)

その後、外国人支援センターに足を運び、女性スタッフとの対話を通じて、こうした問題が日本社会では決して珍しいことではないと知る。学校や教育委員会の対応方針を教わり、どう向き合っていけばよいのかを学んでいった。

「日本の競争文化は“強い者が生き残る”という考え方が根強く、弱さに対する共感が欠けている」。そう語る彼女にとって、この価値観は自らが育ってきた教育観とはまったく異なるものだった。この体験を忘れたくないと考え、記事としてまとめて発表したところ、大きな反響を呼ぶ。

それをきっかけに、出版社の編集長から声がかかり、小学校入学後に直面した文化的ギャップや制度との格闘をテーマに、新たな書籍の執筆が正式に決まった。

彼女は「今回の新作はこれまでの育児エッセイの続編とも言えるけれど、単なる個人の体験記にとどまらず、日本社会の価値観や文化的なギャップにも切り込んだ内容になっている」と話す。外国人として日本で子育てをする中で、良い部分は柔軟に取り入れながら、台湾的な教育観をどう保つかにも触れている。

現在すでに一部執筆が進んでおり、第5作目の出版は2025年中を予定している。当初は前年中の完成を目指していたが、書き進めるうちに日本社会のまだ知られていない側面を深掘りすることになり、試行錯誤が続いているという。「今まで見たことのない日本社会を描く一冊になる」と意気込みを語る。