世界的な半導体大手、NVIDIA(輝達)が中国・上海における業務登記を完了し、現在は人材の募集を進めていることが明らかとなった。中国メディアの取材に対し同社は、「現地の従業員のために新たなオフィススペースを借りており、中国市場への継続的なコミットメントの一環だ」と説明。その上で、「米国の輸出規制を順守し、中国にGPU設計や中核的な知的財産(IP)を移転・変更することはない」と強調している。
NVIDIAによる上海での研究開発(R&D)センター設立計画は以前から注目を集めており、トランプ政権下でも米中の半導体覇権争いの一環として関心が寄せられていた。
上海チームを拡大、最大2,000人体制へ
NVIDIAの上海拠点は、同社のグローバルな研究開発体制の一角を担い、半導体の設計検証や製品の最適化、自動運転技術など、特定分野の研究に取り組む見通しだ。中国の業界メディアによれば、同社は上海において最大2,000人規模の人員配置を計画しており、販売・技術サポートを中心とした体制を構築することで、現地市場における技術展開と顧客対応力をさらに強化するとしている。
NVIDIAは2023年、中国市場で約170億ドルの売上を記録し、世界売上の14%を占めた。CEOのジェンスン・フアン(黄仁勳)氏は、中国市場が数年以内に500億ドル規模へと成長する可能性に言及しており、今後の成長余地に大きな期待を寄せている。

台湾への波及も? 北投士林科技園区への影響懸念
こうした中、NVIDIAによる上海R&Dセンター設立の報道は、台湾の半導体業界にも少なからぬ緊張感をもたらしている。
にもかかわらず、黄氏は中国メディアに対し「中国市場を手放すつもりはない」と断言。特に、中国政府が半導体産業に対して国家戦略としての支援や金融政策を強化しており、「制度的な後ろ盾」がある点を強調。こうした背景もあり、NVIDIAとしては中国市場での事業深化を継続する方針を示した格好だ。
一方で、米中間の貿易交渉では一時的に関税緩和の合意がなされ、90日間の猶予期間が設けられている。この期間は半導体業界にとって極めて重要であり、今後の米中テック戦争の行方を占ううえでも注視されている。
編集:田中佳奈
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