台湾のレジリエンス強化は可能か?米専門家が提言「原発再稼働・低軌道衛星強化・市民の抵抗意志向上」

頼清徳総統が13日「国家安全保障高級会議後の記者会見」に出席。(柯承惠撮影)
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アメリカの外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』(Foreign Affairs)は13日、ジョージタウン大学外交学院のダニエル・バイマン(Daniel Byman)教授と米国戦略国際問題研究所(CSIS)国防安全部門のセス・ジョーンズ(Seth Jones)部長が共同執筆した論考「How to Toughen Up Taiwan(台湾の強化方法)」を掲載しました。

両氏は、台湾の「グレーゾーン脅威」に対する防御策が大幅に不足していると率直に批判しています。論文では、習近平主席が情勢を誤認して台湾に対する軍事行動を決断することを防ぐために、アメリカの支援が不可欠だと主張しています。

バイマン氏とジョーンズ氏は、2022年2月のロシアによるウクライナ全面侵攻の前から、モスクワがウクライナに対し偽情報の拡散、ドンバスの親ロ武装勢力への武器供与、クリミアでの「リトル・グリーンメン(正規軍と認識されない部隊)」の投入などの準備を進めていたと指摘しています。中国がいつか台湾併合を決断した場合、ロシアと同様の戦術応用する可能性があり、台湾にとっては「より直接的な脅威」だと警告します。

中国、台湾の水利インフラの破壊、サイバー攻撃による電力網の麻痺、海底光ケーブルの切断による通信混乱、さらには台湾の反政府勢力への支援などを通じ、重要なのは、一発の銃弾も発射せずに台湾の抵抗意志と力を徹底的に破壊することです。バイマン氏とジョーンズ氏は、台湾も米国も北京のグレーゾーン活動に対して全く準備ができていないと率直に述べています。

​台湾の防衛力は不十分、米国の支援が必要

両著者は頼清徳政権が過去1年間で危機管理能力を向上させたことを評価しつつも、台湾にはまだ長い道のりがあるとも述べています。台湾のエネルギー産業は非常に脆弱で、通信インフラは破壊されやすく、米国の支援なしで台湾市民が武器を取って抵抗する意志があるという証拠はほとんどないことを指摘します。これらの弱点にトランプ政権の「アメリカ・ファースト」政策や、米国の伝統的同盟国の動揺が加わると、北京が台湾侵攻の時期が熟したと判断する可能性があります。

米国の台湾への軍事・訓練支援は主に通常侵攻への対応に集中していますが、バイマン氏とジョーンズ氏は、封鎖や隔離時に島の機能を維持するため、米国が台湾に原子力などの追加エネルギー源の確保を支援すべきだと提言しています。また、中国による海底ケーブル破壊の損失を補うため、トランプ政権は台湾の低軌道衛星通信の強化を支援すべきであり、国際支援の調整のため、ワシントンはウクライナで行ったような大規模な安全保障支援ミッションを構築する必要があるとしています。

トランプ政権が台湾の回復力強化に失敗すれば、台湾が中国の脅威の下で崩壊するか、北京の条件での取引を受け入れざるを得なくなる可能性があります。中国が台湾併合に成功すれば、北京はフィリピンなど他の地域でも同様の戦略を用いる勇気を得るかもしれません。国家安全保障の観点から「回復力」とは、外部からの圧力に抵抗し回復する意志と能力を持つことです。回復力のある社会は、市民を保護し、最低限のサービスを確保し、威圧や侵略に耐えることができます。