異例の対話》民主のために戦うか、平和のために民主を犠牲にするか?中央研究院学者が戦争の影の下で台湾のジレンマを語る

龍応台財団の「異例な対話–平和がなければ、民主主義はどうなるのか?」16日に中央研究院院士の呉玉山が講演を行った。(柯承惠撮影)

アメリカのトランプ大統領(Donald Trump)とウクライナのゼレンスキー大統領(Volodymyr Zelenskyy)がホワイトハウスで繰り広げた世紀の大喧嘩が世界を驚かせ、「今日のウクライナ、明日の台湾」という懸念が再び市民の議論の的となりました。龍応台文化財団は16日、華山文創園区で中央研究院の院士・呉玉山氏と作家・龍応台氏を招き、「平和がなければ、民主主義はどうなるのか?」をテーマに対談を行いました。地政学的な影響を受ける台湾が、日増しに高まる戦争の脅威の中で、平和と安全を維持しながら民主主義体制を守るにはどうすべきかを探りました。

龍応台氏は冒頭で「台湾人は長らく戦争を遠いものとして見てきたが、ウクライナ戦争が勃発したとき、それが私たちにとって非常に身近な問題だと感じました」と述べました。そして、「平和とは非常に深く、重大な学問です」とし、「何が戦争を引き起こすのか? 歴史上の多くの戦争はどのように起こったのか? 準備段階で転換の機会があったのではないか? なぜそれを活かせなかったのか? 戦争が勃発した後、どのようにして平和を得るのか? どのような平和が本当の平和なのか? どのような代償を伴う平和が受け入れられるのか? そして、戦争に勝った側が必ずしも平和を得られるとは限らないのではないか?」と問題を提起しました。

龍氏は、「これらの問いかけは、過去数年間、モグラ叩きのように浮かび上がるたびに叩き潰されてきました。『平和』を語ることが裏切り者扱いされ、現実離れした夢想だと見なされてきました。しかし、民主主義社会の本質は、強力な市民の力があり、どの政党であれ国家を戦争へと導くことを防ぐことです。今、台湾は非常に厳しい立場に置かれ、この問題を考えざるを得ません。国民全体が議論に参加し、戦争の可能性とその結果について話し合う時が来ました」と強調しました。

龍應台財団の「異例の対話 – 平和がなければ、民主主義はどうなるか?」は16日、中央研究院院士の呉玉山氏(左)と作家の龍應台氏(右)による対談が行われた。(写真撮影、柯承惠)
龍応台財団の「対話異聞 – 平和がなければ、民主主義はどうなるか?」は16日、中央研究院院士の呉玉山氏(左)と作家の龍応台氏(右)による対談が行われた。(写真撮影、柯承惠)

平和がなければ民主主義は育たない しかし戦争に直面すると民主主義はジレンマに陥る

呉玉山氏は、「平和と民主主義は共存する関係にあり、現在の台湾には平和研究が急務である。これには、平和と戦争の影響、戦争の原因、戦争を回避し終結させる方法、そして台湾がウクライナの二の舞を避ける方法が含まれる」と述べました。呉玉山氏は講演の冒頭で、平和についての議論が直面する可能性のある批判を提起しました。例えば、軍事的脅威が高まる中で、平和は単に純真な幻想に過ぎないのか、虚しい左派の意識なのかといった疑問があります。そして彼はこれらの問題に答えるためには、平和研究が必要だと考えています。

呉玉山氏は、学界で一般的に考えられている「民主平和論」について説明しました。これは民主国家では戦争が起こりにくいという理論で、それは知識を持った大衆がエリートの指示に従って戦場に向かうことが難しいからです。しかし、全体主義国家の脅威に直面すると、民主体制はジレンマに陥ります。民主主義のために戦争も辞さないのか、それとも平和のために現在の民主体制を犠牲にするのかという選択です。