台湾・賴清德総統は2025年3月13日に国家安全保障会議の高官会議を開き、軍事裁判制度の復活と軍法官の第一線への復帰を発表しました。この動きに対して、野党の国民党は賴清德が戒厳令に向かっていると批判し、台湾民衆党は白色テロや権威主義時代の既視感があると非難しています。12年前の洪仲丘事件では、民進党は軍法に強く反対していました。現在の国防部長である顧立雄氏は当時洪仲丘事件の弁護士を務め、「軍法の復活を許さない」とまで発言していましたが、なぜ今になって方針が大きく変わったのでしょうか。
情報によりますと、これは賴清德総統が突然思いついたわけではなく、就任後に関連政策の見直しを始めたものであり、蔡英文前総統の時代から研究されていた国家安全保障の重要課題を引き継いだものです。また、台湾軍への中国の浸透が深刻で戦力に影響する恐れがあるという懸念から、軍事裁判の復活を提案する重要な声もありました。

中国の浸透が深刻化 賴清德総統が軍事裁判制度を復活
賴清德総統は国家安全保障会議後に、数十年にわたり中国の台湾併合と中華民国消滅の野心は変わっておらず、軍事的脅威だけでなく台湾社会への統一戦線工作と浸透がますます深刻化していると指摘しました。2005年に中国が「反分裂国家法」を公布して武力による台湾併合を国家任務とし、2024年6月にはいわゆる「独立懲罰22条」を発表し、「台湾は中華人民共和国の一部」を受け入れないすべての人を「懲戒」対象としたことから、台湾人民を害する口実としています。最近では国連総会決議2758号を歪曲するなど、中国の台湾主権に対する脅威がますます切迫していることを示しています。
増加する中国スパイ事件を防ぐため、賴清德総統は「軍事審判法」を全面的に見直し修正し、軍事裁判制度を復活させ、軍法官を第一線に戻し、検察・司法機関と協力して現役軍人の反乱、敵への協力、機密漏洩、職務怠慢、命令拒否などの軍事犯罪事件を処理するとしています。今後、現役軍人が陸海空軍刑法の軍事犯罪を犯した場合は、軍事法廷で裁判されることになります。現役および退役軍人による軍の士気を著しく低下させる各種の言動を効果的に抑制するため、国防部は陸海空軍刑法に「敵への忠誠表明」に対する処罰規定を追加し、退職金を受け取る人員に関する規定も修正して、軍隊の規律を有効に維持することを検討しています。

洪仲丘事件で民進党は軍事裁判廃止を主張 立場が変われば考え方も変わったのか?
2013年に洪仲丘事件が発生し、当時の軍事裁判制度は社会的混乱を引き起こしました。民進党は軍事裁判の廃止を主張し、顧立雄氏も軍法廃止の重要な推進者でした。しかし12年が経過し、なぜ今になって賴清德政権が突然軍法を復活させるのでしょうか。社会的混乱を再び引き起こす恐れはないのでしょうか。それとも立場が変われば考えも変わるのでしょうか。
情報によりますと、軍事審判法は2024年に蔡英文前総統の任期末期に修正の議論が始まっており、賴清德総統も就任後すぐに関連機関に法改正の検討を指示していました。実際、2024年3月6日には国防部法律事務司が台湾法学会と共同で台湾大学において「軍事裁判の過去、現在および転換」学術フォーラムを開催し、最高検察署の検察総長である邢泰釗氏や国内の専門家・学者を招いて、「軍事審判法」の変革と将来の発展について意見交換と討論を行いました。