江岷欽の視点:地球で最も危険な場所 「台湾有事」を本気で気にかける国はどこか

2025-11-28 18:46
韓国で開かれたAPEC首脳会議に合わせ、高市早苗首相と中国の習近平国家主席が会談した。(写真/AP通信)
韓国で開かれたAPEC首脳会議に合わせ、高市早苗首相と中国の習近平国家主席が会談した。(写真/AP通信)
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「戦争が決めるのは『誰が正しいか』ではなく、『誰が生き残るか』である」(War does not determine who is right -- only who is left.)。─英国の哲学者 バートランド・ラッセル (Bertrand Russell)

フランスの思想家レイモン・アロン氏も著書『平和と戦争の間で』の中で、「国際関係に道徳は存在せず、あるのは力の均衡だけだ」と記している。

小国がしばしば陥る最大の錯覚は、他国の「道徳心」が自国を守ってくれると信じ込むことだ。だがそれは現実から目をそらす自己慰撫にすぎない。

台湾が直面しかねない外交上の悲劇も、まさにここにある──国際政治を友情劇の延長線上で捉え、地政学的な力学を『道徳的な約束」と読み替えてしまう。しかし暴風雨が本当に迫ったとき、手の中にあるのは盟約ではなく、ただの祈りかもしれない。

台湾が繰り返し口にする「台湾有事は、日本有事であり、米国有事である」という言葉は、あたかも唱え続ければ条約のように効力を持つかのように語られる。しかしそれは願望を戦略に変えるための呪文ではない。この心理的な防衛機制の背景には、「台湾有事は、しばしば台湾だけの『有事』に終わる」という現実を直視したくない集団心理がある。

これは悲観ではなく、国際政治の最古の法則であり、宿命ではなく、力と利益の冷徹な写し鏡。歴史が小国に向けて残してきた、あまりに残酷な備忘録でもある。

ロシア・ウクライナ戦争:舞台裏が照らし出した国際社会の素顔

4年にわたる硝煙が語っているのは、戦争のドラマではない。むき出しの国際秩序そのものだ。ウクライナは拍手とツイート、祈り、軍事支援、掲げられた旗を受け取ったが、戦場に踏み込んだ米軍やNATO兵士は一人もいない。

キーウの街が夜空を赤く染めているときも、ブリュッセルの記者会見場には相変わらず暖かなライトが灯っていた。マリウポリの子どもたちが国境で凍えて命を落としているときも、欧州の外相たちはコーヒーカップを手に交渉を続けていた。ロシア軍が押し寄せた瞬間、NATOが口にしたのは「支えるが、介入はしない」という一文だった。

そこにあるのは、ほとんど残酷と言っていい距離感だ。外交の世界では、同盟国はあなたの痛みには付き合ってくれるが、あなたの代わりに傷ついてはくれない。戦場では、味方は「倒れるな」と支えてくれても、あなたの代わりに地面に横たわることはない。

ロシア・ウクライナ戦争は、世界に一つの残酷だが永続する現実を見せつけた──小国の悲劇は、大国の「緊急事態」には決してならない。この物語の「ウクライナ」を「台湾」に置き換えたとき、筋書きは少しは優しくなるのだろうか。歴史が告げる答えはこうだ──「いいえ。それどころか、もっと冷たくなる」。

アメリカ:言葉は同盟国のもの、利益こそが本音

アメリカの対台湾政策は、理想主義という包装紙に包まれながら、芯の部分は鋼のように冷徹な現実主義でできた迷路だ。一見なじみ深く見えても、そこを進むルートは、私たちが思い描いてきた道筋とはまったく違っている。

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