香港で過去63年最悪の高層火災》宏福苑7棟が「火の滝」と化し垂直生活の避難網が崩壊、数百人不明で責任追及が焦点に

新界・大埔に位置する香港政府支援の自宅購入計画の一環「宏福苑」。高層で戸数が密集した造りは、土地の限られた香港が「上へ伸びる」ことで住まいを確保してきた現実を映し出すが、今回の宏福苑火災では、その空間構造が火勢を隣接棟へ一気に広げる致命的な弱点として噴き出した。(写真/AP通信)
新界・大埔に位置する香港政府支援の自宅購入計画の一環「宏福苑」。高層で戸数が密集した造りは、土地の限られた香港が「上へ伸びる」ことで住まいを確保してきた現実を映し出すが、今回の宏福苑火災では、その空間構造が火勢を隣接棟へ一気に広げる致命的な弱点として噴き出した。(写真/AP通信)
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香港・宏福苑で発生した大規模火災は、27日午前11時の時点で44人の死亡が確認され、なお数百人が行方不明となっている。市街地でこれほどの犠牲が出るのは過去63年で最悪とされ、高層住宅の外壁工事の資材や足場の構造、消防監督体制に潜む構造的な脆弱性が一気に噴出した形だ。急速な延焼の背景には何があったのか、刑事調査に踏み切った香港当局の動きとあわせ、現時点で判明している情報をまとめた。

火災はどのように広がったのか

事件が発生した当日の午後、大埔区にある1980年代に建設された住宅「宏福苑」の外壁竹棚から火の手がまず上がった作業中の棚架が瞬時にして火が上昇する通路となった。火は建物の壁に沿って上昇し、短時間で複数のビルの外壁を包んだため、香港宏福苑の火事は急速に制御不能に陥った。宏福苑には31階建ての8棟、計1900を超えるユニットがあり、近年大規模な改修工事を行っていたため、外壁全体が竹棚や緑色の安全ネット、プラスチックシートに密接に覆われていた。これらの材料は本来は施工の安全を保障する材料であるが、高温下では燃料層となり、香港宏福苑の火事をさらに激しくしてしまった。火災は26日午後2時51分頃に通報され、短時間で一般警報から四級に引き上げられ、夕方前には香港の最高級別である五級火に升格された。これは現場が香港で最も厳しい災害状態の一つであることを示している。夜になると、宏福苑の多くのビルの外壁には火が依然として燃え盛り、濃煙は燃える竹棚やプラスチック素材の臭いを含んで噴き出した。遠方からも火勢の広がりの輪郭がはっきりと見え、近隣の街区は一時的に封鎖されるという香港宏福苑火災の恐ろしい場面があった。

なぜこれほど急速に燃え広がったのか

火勢が短時間で7棟に及んだ背景には、足場材の竹と安全ネット、ビニールシートが組み合わさり、「垂直・水平の燃焼通路」を形成していた点が指摘されている。専門家によると、乾燥した竹材は表面積が大きく軽量で、空気の流れを受けやすい構造だという。そこに可燃性の高いプラスチック系ネットやシートが加わり、外壁全体が一つの「可燃外皮」のような状態になっていたとみられる。

警察と消防が現場で確認したところ、外壁に火災基準を満たさない可能性のあるネットやビニール素材が使われていたほか、窓際には発泡スチロールや緩衝材など可燃性の高い物品が大量に置かれていた形跡があった。これらが延焼を加速させた可能性がある。

当日の風速は時速14キロ程度と強風ではなかったものの、高層住宅の隙間では上昇気流が生じやすく、燃えた竹材やネット片が風に乗って周囲の棟へ飛散。「火の粉」が次々と別の階や別棟に落下し、火元が連鎖的に拡大した。想定を超える速度で炎が広がった一因とみられている。 (関連記事: 香港・大埔の公営住宅で大火災、44人死亡 「竹製足場」が延焼要因の可能性、施工会社幹部3人を拘束 関連記事をもっと読む

高層住宅が密集する香港で何が起きたのか 宏福苑と都市構造のリスク

宏福苑が位置する新界・大埔地区は、香港政府が進める「自置居所」(公的支援による分譲住宅)制度の一角を担うエリアだ。建物は高層で戸数が多く、香港が長年抱える「垂直型の住宅構造」を典型的に示している。この密集構造は、今回の火災で大きな弱点として露呈した。

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