インテルが台湾に拠点を構えてから、今年でちょうど40周年を迎える。この節目の年にあたって、CEOに就任したばかりの陳立武(Lip-Bu Tan)氏が初めて台湾を訪問。AIコンピューティング、サプライチェーン戦略、そしてエンジニアリング文化の再構築をテーマに講演を行った。
陳氏は、「グローバルレベルのAI製品を生み出し、顧客との共創を深めることこそ、新たなインテルの中核方針だ」と強調。今後は、台湾の半導体サプライチェーンとの連携をさらに深化させ、次世代のデータセンター、高性能コンピューティングプラットフォーム、AIチップ技術の開発を加速させていく構えを見せた。
プロダクトと顧客重視で、企業文化を再構築
「私はチームに『とにかく実行、実行、そしてもう一度実行せよ』と伝えています」。
陳氏は、インテルが過去にデータセンター事業や先端プロセスにおいて課題を抱えていたこと、いくつかの製品が競争力に欠けていたことを率直に認め、これらをエンジニアリング文化の刷新の出発点と位置付けた。
技術重視の姿勢を取り戻すため、エンジニアリング部門をCEO直属に再編し、意思決定プロセスを再び技術中心のものへと戻す方針を示した。また、「エンジニアからエンジニアへ、アーキテクトからアーキテクトへ」という直接対話の体制を構築し、部門横断的な技術協力を促進している。
さらに陳氏自身も、顧客との直接的なコミュニケーションを大幅に増やしていると語り、「クラウド大手からOEM、新興企業まで、毎日のように対話を重ねており、現場の声を受け止め、変革を推し進めている」と述べた。
「台湾は戦略上の要衝」──現地の声に耳を傾け、連携を深化
陳氏は講演のなかで、「台湾の重要性は極めて大きい」と繰り返し強調。
「CEOに就任して初めて台湾を訪れ、40年にわたる協力関係をともに祝えることを光栄に思う。今後は、台湾の顧客との対話を一層密にし、サプライチェーンパートナーとの計画・イノベーションにもさらに深く関与していく」と語った。
AIチップ開発、データセンタープラットフォーム、半導体システムの統合といった領域において、台湾の技術サプライチェーンとの緊密な連携が不可欠になるという見方を示し、OEMからシステム統合、先端パッケージング、メモリアーキテクチャ設計に至るまで、台湾が担う役割は今後ますます重要になると述べた。
研究開発と供給の柔軟性を両立──エンジニアリング文化の再創造
現在インテルは、次世代のAIコンピューティングアーキテクチャとシステムレベルでの統合ソリューションの展開に注力している。
陳氏は、「今後はCPU単体にとどまらず、チップ、メモリ、ネットワークからAIワークロードの統合に至るまで、システム全体のソリューションを構築していく」と説明。
その中核を担う技術として、高速伝送アーキテクチャ(CXLなど)やカスタムSoCチップといった領域を挙げ、台湾の企業と手を携えて取り組んでいく方針を示した。「台湾の持つイノベーション力を、インテルのグローバルな展開を支える推進力にしたい」と語った。