北朝鮮、駆逐艦の進水式で重大事故 金正恩氏一部始終目撃「犯罪的行為」と激怒

北朝鮮の最高指導者、金正恩氏。(AP通信)
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北朝鮮北東部・咸鏡北道清津(チョンジン)の造船所で5月21日に実施された新型5000トン級駆逐艦の進水式で、重大な事故が発生し、進水に失敗していたことが22日、同国の国営メディアにより明らかとなった。

式典には朝鮮労働党総書記の金正恩(キム・ジョンウン)氏が出席しており、一部始終を目撃した同氏は、「到底容認できない重大事故」「国家の尊厳と自尊心を一瞬で失墜させる犯罪的行為」として、関係者に強く責任を追及する姿勢を示した。

船体損傷、座礁──進水中に制御不能に

事故は、進水を補助する台車が艦首と連動して動かなかったことで発生。艦尾部分のみが先に海へ滑り出し、バランスを崩して座礁、船底に穴が開くという深刻な損傷を受けた。艦首は台車に残されたまま進水できず、進水作業は完全に失敗に終わった。

金総書記はこの原因を「不注意と無責任、非科学的な経験主義によるもの」と断じ、軍需工業部門や国家科学院力学研究所など、関係する複数の機関に対して強く非難。「党中央委員会総会で取り上げざるを得ない事案」として、6月下旬に予定されている党中央委員会総会で関係者の責任を追及する方針を示した。

異例の事故公表、修復と調査が急務に

北朝鮮がこのような軍事関連の失敗を公に認めるのは異例。関係筋によれば、金氏の激しい怒りと責任追及姿勢が、あえて情報公開に踏み切らせたとの見方も出ている。事故の詳細については現在、事故調査グループが原因を調査しており、損傷した艦の修復作業も6月下旬までの完了を目指し、急ピッチで進められている。

海軍近代化計画に打撃も

今回の駆逐艦は、北朝鮮が進める海軍近代化の象徴的存在とされていた。金氏はすでに4月下旬、西部・南浦(ナンポ)市の造船所でも同型の駆逐艦「崔賢(チェ・ヒョン)」の進水式を実施し、年次ベースでの継続的な艦艇建造、将来的には巡洋艦や護衛艦の建造計画も打ち出していた。

このため、今回の事故は金政権が掲げる海軍力強化方針にとって大きな打撃となる可能性がある。同時に、党中央の権威と軍需部門の統制力にも疑問符がつくこととなり、今後の体制内処分や人事異動の行方に国内外の注目が集まっている。

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