インフルエンサー・ゲーム・ショート動画は政府対外宣伝より効果大! 英エコノミスト誌が「ソフトパワー」による「クールチャイナ」実現を分析

2025年4月16日、広州で開催された中国輸出入商品交易会にて、AIロボットの供給業者が顧客を待っている。(AP)
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中国政府は長年にわたり多額の資金を投入して国際的なイメージ向上を図ってきたが、「威権体制」の影を破ることはできなかった。『エコノミスト』は、近年、外国の無名のインフルエンサー・世界的に人気のあるゲーム・ショートムービーや短編ドラマが、中国を「クール」にし始めたと指摘。しかし、中国の人権抑圧や自由への制限は、依然としてその国際的なイメージに対する超え難い障壁となっている。

3千万人がインフルエンサーの中国旅行を見る

アメリカの20歳のインフルエンサー、ダレン・ジェイソン・ワトキンズ(Darren Watkins Jr.)は、「IShowSpeed」というネット名で広く知られており、豊かな表情のリアクションが中国のネットユーザーに「甲亢哥」と呼ばれている。2025年3月から4月にかけて、ワトキンズは中国で2週間の旅行ライブを行い、全世界の3,800万人のフォロワーに中国の歴史遺跡(万里の長城)、親切な人々(トランプを模倣する人々と交流)、技術の進歩(ロボットとダンス、ドローンによる食品配達、飛行タクシーを体験)を紹介した。

深圳では、ワトキンズが007スタイルの水陸両用電動SUVを池に乗り入れ、驚いて「この車、沈まない!中国はすごい、中国の車はすごい!」と叫んだ。彼は中国全体の旅程で、「中国は本当に変わった、みんな」と頻繁に感嘆していた。

2025年4月、美国20歳インフルエンサー「IShowSpeed」が中国での旅をライブ配信し、深圳で水陸両用SUVに興奮して乗る様子。(IShowSpeedから引用)
2025年4月、美国20歳インフルエンサー「IShowSpeed」が中国での旅をライブ配信し、深圳で水陸両用SUVに興奮して乗る様子。(IShowSpeedから引用)

様々な国際世論調査が示しているように、中国の支持率は新型コロナウイルスのパンデミック時に最低点に達し、その後徐々に回復している。コンサルティング会社「ブランド・ファイナンス」は毎年、全世界の10万人を対象に各国の評判や影響力を調査している。同社の世論調査によると、中国の「国家ブランド」は2021年の世界8位から今年は2位に上昇し、米国に次ぐ。また、デンマークの民主主義同盟基金は、2022年から中国の世界的な「純感情スコア」が-4%から+14%に上昇したと指摘している。一方、米国は一年で+22%から-5%に急落した。ピュー・リサーチ・センターによれば、米国でさえ近年、中国への印象が若干改善し、特に若年層の態度は寛容である。

2025年3月、米国20歳インフルエンサー「IShowSpeed」が中国での旅をライブ配信し、万里の長城で体操を楽しむ様子。(IShowSpeedから引用)
2025年3月、米国20歳インフルエンサー「IShowSpeed」が中国での旅をライブ配信し、万里の長城で体操を楽しむ様子。(IShowSpeedから引用)

公式が「ソフトパワー」に年間100憶ドルを投入

長年、中国のリーダーたちは「甲亢哥」のような熱狂を外国に引き起こしたいと考えてきた。中国共産党は、軍事力や強制手段を用いずに外交目標や経済目標を達成する「ソフトパワー」を育成しようと試みてきた。2013年に、中共中央政治局は、ソフトパワーが「中華民族の偉大な復興という中国の夢」を実現するために不可欠であると述べている。
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あるアメリカの学者が『エコノミスト』に語ったところによると、中国は10年前ですでに年間100億米ドルを投入し国際的なイメージを向上させており、現在の支出はさらに増加している可能性がある。中国は海外の大学に500以上の孔子学院を設立し、中国語の教育と文化コースを提供している。中国の国営メディアは、西側のソーシャルメディアで大量のポジティブなストーリーを報道し、毎年数百人の外国ジャーナリストが中国を訪問し、高速鉄道ネットワークなどのインフラ整備を見学している。