米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)のジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、2025年5月に台北市の北士科エリアにあるT17およびT18用地に本社ビルを設ける方針を発表した。これは蔣万安台北市長にとって大きな成果とされていたが、2カ月が経過しても進展がなく、注目が集まっていた。
主な停滞要因は、土地を所有する新光人寿が、具体的な協力内容について明確な態度を示してこなかったことにある。しかし、風傳媒の取材によると、ついに新たな動きがあったという。新光人寿は7月10日、台北市政府に対して正式に通知を行い、NVIDIAへの土地の使用提供に応じる意向を明らかにした。法的な調整や地価の再評価、費用負担の整理が済めば、すぐにでも本社建設がスタート可能な状態となる。
この2カ月間、インターネット上では「計画変更か」といった憶測が飛び交い、台北市議の游淑慧氏も新光人寿の対応に不満を表明していた。同氏は、土地取得から長らく進展がないことを問題視し、延長可能な規定があるとしても建設の遅れを指摘。市政府とNVIDIAだけでなく、新光人寿に対しても強い姿勢で臨むべきだと述べていた。
一方で、市政府は李四川副市長が主導するプロジェクトチームを通じて、NVIDIAとの対話を週単位で続けており、最終的に新光人寿が土地譲渡の意思を正式に表明。当初注目されていた「建物完成後に譲渡か賃貸か」という問題も、土地そのものをNVIDIA側に移譲する方向で決着がついた。
T17とT18を一体化するには中央道路の廃止や建蔽率の調整、都市計画の変更などが必要となるが、新光人寿は統合後の手続きはNVIDIA側に任せる方針を示しており、障壁が一つ解消された形となった。
ただし、法的な問題も残されている。前台北市長の柯文哲氏がT17・T18の地上権を新光人寿に付与した際の経緯が「利益供与」に該当する可能性があるとして、現在も調査が進行中だ。
NVIDIAと新光人寿はいずれも上場企業であり、今回の譲渡が高額に及ぶ可能性もあるため、市政府は利益供与の疑義を避けるべく、土地譲渡や都市計画変更の審査に慎重を期す必要があるとされる。
法律面の調整が完了すれば、NVIDIAによる本社ビルの建設は速やかに始められ、台北市がNVIDIAの正式な拠点の地となることが確実となる。
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