アメリカはGenius法案の推進に前例のない決意を示しており、次世代の金融ツールを構築するだけでなく、世界のバーチャル資産の秩序を主導し、ドルの覇権を再構築しようと試みている。台湾金融科技協会副理事長の温宏駿氏は、『風傳媒』のインタビューで「これは『バーチャル資産の新冷戦』であり、その戦場は技術ではなく、制度の標準とチェーン上の発言権にある」と述べた。
温宏駿氏は20年以上の金融業界の経験を持ち、永豊金証券、聯邦投信、大華証券（香港）を渡り歩き、近年では新経済とブロックチェーンの発展に積極的に取り組んでいる。特にステーブルコインとデジタルアイデンティティ（DID）の政策提言に尽力している。彼は「金融派大星」という名で伝統金融と暗号技術を結びつける重要な推進者として注目されている。
ステーブルコインは石油ドル2.0、アメリカが輸出するのは技術ではなく規則
「ステーブルコインの役割は、石油が産業社会に果たした役割と似ており、世界のチェーン上資産の決済媒介と価値の基準となるだろう。」と温宏駿氏は分析する。将来、すべてのトークン化された資産（Tokenized Assets）はステーブルコインを基盤の計量単位とし、その背後にあるのは技術の革新ではなく、この新しい秩序を定義する制度の論理である。
彼は、Genius法案（アメリカステーブルコイン国家イノベーションガイドライン法案）の鍵は制度の輸出にあると強調した。「アメリカはステーブルコインの法律の枠組み、技術標準、チェーン上の環境を構築しており、他の国は追随するか、排除されるかを選択するしかない。」
5月19日、アメリカ上院は66対32で手続き投票を行い、Genius法案の推進を決定し、最速で翌週に実質的な投票段階に進み、下院に送付される予定である。温宏駿氏は、これは今後30年で最も決定的な金融立法であり、「これは通貨と通貨の競争だけではなく、金融構造全体の書き換えである」と述べた。
金融新秩序：AI＋DID主導、伝統的な銀行は取って代わられる
温宏駿氏は、このバーチャル資産新冷戦の核心は、全球決済システムの中でのドルの立場低下であると指摘する。「2000年以降、ドルの世界的な使用率は7割から5割以下に落ち込んだ。実体経済の支えがないアメリカは、制度と標準の突破口を探すしかない。そして、それを支えるのがステーブルコインである。」
現実世界の資産（Real-World Assets, RWA）がチェーン化される中で、アメリカはステーブルコインシステムを通じて各国中央銀行が推進するCBDC（中央銀行デジタル通貨）を排除しようと画策している。 （関連記事： 「AIマーケター」誕生 電通の新ソリューションで業界の常識が変わる ｜ 関連記事をもっと読む ）
「CBDCを発行したとしても、チェーン上の市場シェアが0.1％しかない場合、誰が注目するだろうか？チェーン上のエコシステムがないCBDCは発言権を持たないということだ」と彼は予測し、アメリカ標準に適合しないCBDCは国際取引ネットワークに参加することが難しいと述べた。アメリカはステーブルコインとRWAのダブルレバレッジを通じて、実質的に世界金融主権を再構築しようとしている。
