中国共産党常务委員兼副総理の何立峰氏は最近日本を訪問した際、「日中両国は地理的に近く切り離せない鄰人である」と述べ、この発言が注目を集めた。財団法人新世代金融基金会の陳冲董事長は14日、この発言は多義的で肯定的にも否定的にも解釈できると指摘した。
陳冲氏は、抗日戦争勝利80周年を目前に控え、何立峰氏が日本に対して「切り離せない鄰人」と述べたことは複雑なメッセージを含んでいると述べた。北京にとって重要なのは、司馬光が千年前に語った「王者不欺四海、霸者不欺四隣(優れた指導者は誠実さと信頼を基盤とすべきである)」という名言であろう。
以下は、「切り離せない鄰人」をテーマにした陳冲氏の全文である。
中国共産党常務委員兼副総理の何立峰氏は7月中旬に訪日した際、自民党幹事長に対して「日中両国は切り離せない鄰人である」という一見普通に見えるが考えさせられる発言をした。「切り離せない鄰人」は肯定的にも否定的にも解釈できる。前者が「遠い親戚より近くの鄰人」であり、後者が「悪い鄰人が去らない」で、双方の関係次第である。
19世紀半ば、メキシコはアメリカの移民をテキサスに招き開発したが、テキサスが独立を試み、アメリカに併合しようとしたため米墨戦争(1846-1848)が勃発し、双方で1万人以上の死者を出した後、アメリカが勝利し、メキシコは領土の半分(現在のテキサス、カリフォルニアなど7州)をわずか1825万ドルで割譲することになった。このことはManifest Destiny(明白な運命)が広まる契機となった。しかし、トランプがメキシコの不法移民を非難するたびに、メキシコの国民はその土地が誰のものかを考えるだろう。鄰人の関係は力の差だけでは測れない。
米墨関税30%、米加35% トランプは切り離せない悪い鄰人
歴史的背景によりアメリカ・メキシコの関係は常にいくつかの摩擦を抱えていたが、20世紀後期になると、ヨーロッパ共同市場の誕生に呼応しレーガン大統領が北米共同市場を提唱、1994年にNAFTA(北米自由貿易協定)が成立した。これによりカナダ・アメリカ・メキシコが領土的に緊密に結ばれた自由貿易圏となり、共生共栄を促進した。三国は比較利益に基づき多くの利益を受けていた。しかし、これで幸せな日々が続くのか。2016年、トランプ氏が初めて大統領に就任し、アメリカの栄光が失われたことや製造業の雇用喪失を自由貿易に起因するとして、NAFTAの再交渉を強く求めた。そして2018年8月と9月にカナダ・メキシコと新たな協定を結び、その過程での近似的な威圧的手法が鄰国に強い印象を残した。トランプ氏が再び政権を握ると隣国を連続して非難し、先週末にはメキシコとカナダに対して30%及び35%の関税を課し、自由貿易協定を無視した。メキシコはこれに対して「切り離せない鄰人」と嘆くしかなかった。 (関連記事: 中国富裕層が日本へ大量移住 ビザ制度に抜け穴?SNSで「入国拒否」広がる声 | 関連記事をもっと読む )
1969年、物理学から経済学に転向したヤン・ティンバーゲン教授が初のノーベル経済学賞を受賞。その有名な貿易重力モデルは、「2つの経済体の貿易総量は双方のGDPの積に比例し、距離の二乗に反比例する」というものである。言い換えれば、両者が経済強国で距離が近い場合、相互に頻繁に貿易するのが自然である。ティンバーゲンの主張は「切り離せない鄰人」を学術的に説明したものであり、半世紀前にトランプ政権に対して、市場の歪曲や保護主義、自由貿易に反する行為は長期的に見て有効ではないと示唆している。何より既に協定がある鄰人に対しては。