台湾のスーパーが「防空訓練」に参戦 頼政権と全聯が共闘へ

2025-07-14 16:12
PX Mart(全聯福利中心)の林敏雄会長(写真)は、かつて頼清徳総統と意見の対立があったものの、今や台湾社会防衛の強靭性を築くという共通の目標のために手を携えている。(写真/顏麟宇撮影)
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台湾では旧暦の7月になると、大手スーパーの全聯福利中心(PX Mart)が幽霊をテーマにしたユニークな広告を展開するのが恒例となっている。2013年の「貞子編」は当初驚きとともに受け止められたが、次第に話題となり「全聯先生」のキャラクターを一躍有名にした。こうしたユーモラスな広告は、中元節や台風時の購買行動と巧みにリンクし、全聯のブランドイメージを確立させてきた。

そして今、全聯はその影響力を活かし、国家的な安全保障政策の一翼を担う存在となっている。7月9日から台湾全土で始まった「漢光41号」実兵演習にあわせ、防空避難訓練が各地で実施されるなか、PX Martは台北・台中・台南の3店舗で実際に営業を一時停止し、市民を巻き込む形での防空訓練に協力した。

7月10日午前10時、台北の信義黎忠店、台中の旅順店、台南の生産店では、一斉に営業を中断するアナウンスが響いた。「空襲警報があります。皆様、冷静に売り場の指示に従って避難してください」という店内放送とともに、買い物客はスタッフの誘導で店舗外に避難。この防空演習は、ミサイル攻撃を想定したリアルなシナリオで行われた。

当日は午前9時半頃からメディアも多数詰めかけ、売り場スタッフは丁寧に訓練の趣旨を説明。多くの市民は会計を済ませて店を後にし、一部の人々は見学に訪れた。全聯が半時間営業を中断してまで防空訓練に協力した背景には、頼清徳政権が掲げる「防衛韌性(レジリエンス)」の強化政策がある。

20250710-国防部10日実施「陸軍M1A2T新型戦車換装訓練実弾射撃」。
漢光演習2日目、国防部が「M1A2T実弾射撃」を実施する一方、台湾全域で初の防空避難訓練が同時に行われた。(写真/柯承惠撮影)

民間からも「防衛力」──頼政権と全聯の連携

頼清徳政権は前政権・蔡英文氏の時代に構想された「全民防衛」政策を引き継ぎ、2024年には大統領府主導の「全社会防衛韌性委員会」を発足。2025年には防災演習「民安」「萬安」を含めた「都市防災レジリエンス演習」を展開している。

当初、全聯での防空訓練は7月15~17日に予定されていたが、最終的には7月10日に変更され、3都市の店舗で先行実施された。訓練には内政部の副次官3名がそれぞれの現場を視察。台北会場には、海軍陸戦隊を思わせる柄のハワイアンシャツを着た馬士元次官が登場し、国安会副秘書長の林飛帆氏も同行。現場では終始なごやかな雰囲気のなか、彼らは「とても良い試み」と満足げに語っていた。

20250710-全聯台北市信義黎忠店が10日朝に防空疎開避難訓練を実施し、内務省次官馬士元(中央)が視察に訪れる。左から内務省警察署副署長詹永茂、国家安全保障会議副秘書長林飛帆、全聯福利中心協理劉鴻徵、台北市政府警察局副局長張隆興。(鍾秉哲撮)
全聯(PX Mart)の信義黎忠店で10日朝に行われた防空避難訓練に、馬士元内務省次官(中央)が視察し、林飛帆国家安全保障会議副秘書長(左から2番目)も出席した。(写真/鍾秉哲撮影)

全聯、演習の1か月前から準備 「混乱回避」へ綿密な台本リハーサルも

全聯は6月の段階から今回の防空演習に向けた準備を始めていた。突発的な事態による混乱を避けるため、政府と協議を重ねた上で、公式訓練の2日前からは状況を想定した台本を用いたリハーサルも実施された。内政部の馬士元次官らも現場に立ち会い、訓練の進行状況を確認したという。

全聯の協理で広報も務める劉鴻徵氏によると、今回の訓練には3店舗が参加し、各店舗で数十人が参加したが、営業への影響は最小限にとどまった。演習は午前10時に実施され、来店者のピークである11時以降を避けたことで、業務への支障も少なかったと説明した。

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