2025年7月に実施される参議院選挙が終盤を迎える中、東京大学東洋文化研究所の特任研究員である林泉忠氏は、台湾メディア《風傳媒》の取材に応じた。その中で、今回の選挙戦において「外国人政策」や「排外主義」が、これまでにないほど大きな争点となっていることに対し、強い懸念を示した。
景気から移民へ──異例の選挙争点
林氏は「これまで日本の有権者が最も関心を寄せていたのは、長年にわたって景気や生活に関する問題だった」と指摘。そのうえで、「今回の選挙では『移民』や『外国人政策』が主要な議題の一つになっている。これは私が30年間日本社会を観察してきた中でも前例のないことだ」と語った。

実際、今回の選挙では国会に議席を持つほぼすべての政党が、何らかの形で外国人に関する政策を公約に掲げている。背景には、近年急増している在留外国人の存在がある。2024年末時点でその数は約376万人に達しており、特に林氏は中国からの移住者や留学生の増加、いわゆる「潤(ルン)潮」現象に注目。「現在の日本は、中国人にとって有力な移住先の一つとなっている」との見解を示した。
外国人急増が教育現場に影響
林氏は、自身が居住する東京都文京区における具体例を紹介。区内の公立小学校では外国人児童が急増しており、学校側では「言語の壁」や「保護者との意思疎通の困難さ」が課題となっているという。「子どもは半年ほどで日本の生活に適応するが、親の日本語能力が不足しているため、学校運営に影響が出ている」と指摘した。

また、自治体による支援の在り方についても課題があるとし、「たとえば中国人家庭を対象にした支援を行うと、他の国籍の住民から『不公平だ』との声が上がる。そのため、行政としても支援の線引きに慎重にならざるを得ず、こうした状況が地域社会の摩擦や誤解を助長している」と語った。
保守政党と進歩政党の対立──外国人政策における明確な違い
今回の参議院選挙では、外国人政策を巡って保守系政党(自民党、公明党)と進歩系政党(立憲民主党、日本共産党など)の間で立場の違いが鮮明になっている。
自民党は現在、「在日外国人管理条例」の創設を検討しており、地方自治体に対して外国人の実態を把握し、必要に応じて通報できる権限の強化を図ろうとしている。これについて、林泉忠氏は「まるで外国人が『管理されるべき存在』であるかのような印象を与えかねない」と懸念を示している。

一方、立憲民主党や共産党は、外国人の労働や社会への貢献に注目し、より寛容で共生的な社会の実現を訴えている。林氏は「日本のコンビニエンスストアやいわゆる3K労働(きつい、汚い、危険)は、今や外国人労働者抜きでは成り立たない。コンビニの店員の多くが外国人であるという現実に目を向けるべきだ」と語った。 (関連記事: 独占インタビュー》中国人からの妨害にも屈せず――「反送中」第一人者・平野雨龍氏、日台注目の2025参院選に最年少で挑む | 関連記事をもっと読む )
参政党の台頭と排外主義の再燃
林氏が特に問題視するのは、「日本人ファースト」を掲げる参政党の主張である。参政党は、外国人による医療制度の利用制限や、税金の「浪費」への批判を強めており、林氏はこれを「極めて排外的な言説」だと指摘する。