ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は7月16日、都内で開催された「SoftBank World 2025」に登壇し、生成AIの進化がもたらす社会変革について講演した。孫氏は、OpenAIのサム・アルトマンCEOとの対談も交えつつ、同社が推進するAIエージェントの導入計画と今後の展望を語った。
「AIは感情と意識を持ち始める」
冒頭、孫氏は「AIは音楽や芸術の領域にまで進化している」と述べ、AIが作詞・作曲・歌唱まで行ったバンド「ベルベットサンダーオン」の楽曲を紹介。「AIは人の感情を理解するだけでなく、自らも感情や意識に相当するものを持ち始めていると私は信じている」と語った。
OpenAIのアルトマンCEOとの対談では、「AIエージェント」がすでにコードの自動生成やレポート作成、ナレッジワークの自律実行といった分野で活用され始めている現状を共有。アルトマン氏は「5年後にはAGIを超える進化が起きるだろう」と述べ、「10年後には科学や経済の発展スピードが根本的に変わる。30年後の未来はもはや未知の領域にある」と強調した。

「10億倍の進化」へ──“スターゲート構想”の全貌
孫氏は、2025年1月に発表したAIインフラ構想「スターゲート」についても触れた。AIチップや演算能力、モデル性能を1サイクルごとに10倍へと拡張し、最終的に3サイクルで10億倍の性能進化を目指すという。
「自転車と新幹線の差はせいぜい20倍。10億倍の世界は人間の想像を遥かに超える」と語り、「AIの限界を口にする人がいるが、それはAIの限界ではなく、人間側の理解の限界だ」と訴えた。
ソフトバンクグループは、年内に10億体のAIエージェントを導入する計画を明らかにした。社員1人に対して1000体のエージェントを付与し、人事、財務、営業、ネットワーク管理などの業務をAIが24時間365日で補完する体制を構築する。
孫正義会長は、これらのAIエージェントが「自ら“子”、さらに“孫”や“ひ孫”のエージェントを自動生成し、自己増殖と自己進化を実現する仕組みを備えている」と説明。「中核となる『エージェントOS』を用いた自己増殖・自己進化の技術について、すでに特許出願を行った」と明かした。
さらに孫氏は、「将来的には、社員一人ひとりが千の手と千の目を持つ“千樹観音”のような存在になる」との構想を提示し、「AIエージェントは24時間365日、人間の思考や行動を補完する存在となる」と強調した。
コールセンター・ショッピングでもAIが活躍
講演では、AIエージェントがコールセンター業務を代替するデモも披露。方言の理解やリアルタイム対応により、人間を上回る対応品質が実現できると説明した。また、利用者の購買履歴や好みに基づいて商品を提案し、キャンペーン価格を自動で適用し購入まで完結する「ショッピング支援AI」も紹介された。
「進化を疑うな」──日本社会に警鐘
孫氏は、日本企業における生成AIの活用率がアメリカや中国では80%以上に達する一方、日本ではわずか20%程度にとどまっていると指摘。「進化を疑い、斜に構えて見る企業や人々は、自らの未来を制限している」と強い言葉で警鐘を鳴らした。
「AIは人類の相談相手であり、医師、教師、友人、仲間にもなる存在だ。進化を真正面から受け止め、積極的にその波に加わることが、今の日本に求められている」と訴えた。
最後に孫氏は、「いくら道具がそろっていても、進化を否定する人間や企業に未来はない。進化に食らいつき、主体的に関与することが何よりも重要だ」と述べ、約1時間に及ぶプレゼンテーションを締めくくった。
編集:梅木奈実
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