日・フィンランド首脳が共同声明 「台湾海峡の平和」明記し安保・経済で連携強化へ

2025-06-19 10:49
2025年4月28日、ベトナム・ハノイで演説を行う日本の石破茂首相。(AP通信)

石破茂首相は6月11日、来日中のフィンランド共和国アレクサンダー・ストゥッブ大統領と会談し、その後、共同記者会見およびワーキングディナーを行い、日・フィンランド間の今後の協力深化について意見を交わした。これにあわせて両国は「日本国とフィンランド共和国との間の将来における協力強化に関する共同声明」を発表した。

両首脳はまず、能登半島地震の被災地を訪問したストゥッブ大統領夫妻の行動に対し感謝の意を表明。フィンランドからの絵本の寄贈などの支援についても謝意が述べられた。安全保障面では、両国がともにロシアと国境を接する戦略的パートナーであることを踏まえ、インド太平洋と欧州大西洋地域にまたがる安全保障環境が不可分なものとなっている現状に強い認識を示した。

防衛装備やシェルターを含む安全保障分野での連携強化に加え、5G・6G、スーパーコンピュータ、量子技術といった最先端技術での協力を推進していく方針が確認された。さらに、貿易・経済安全保障、文化交流、人的往来など多岐にわたる包括的協力の深化でも一致した。

地域情勢に関しては、「力による現状変更は認めない」との原則を再確認。ウクライナへの支援継続や、ロシアと北朝鮮の軍事的関係強化に対する深い懸念を共有した。また、北朝鮮の拉致・核・ミサイル問題に関しても、緊密に連携していく意向を示した。

共同声明には、「台湾海峡の平和と安定の重要性」が明記されており、「両岸問題の平和的解決を促す」との文言も盛り込まれた。これは、フィンランドが民主主義国家として日本と価値観を共有し、台湾情勢においても立場を共にする姿勢を明確にしたもので、台湾にとっても注目すべき外交的進展となった。

また、国際秩序の維持に向けた多国間主義の推進、ロシアによるウクライナ侵略に対する制裁協力、東シナ海・南シナ海を含む海洋における国際法の遵守、核不拡散体制の維持など、安全保障の幅広い分野での連携が確認された。

経済分野では、WTO改革、直行便の活用による交流強化、半導体や重要鉱物のサプライチェーン強靭化、海底ケーブルを含むデジタルインフラ分野での協力推進が柱として挙げられた。

さらに、グリーントランジション(GX)や北極圏における科学研究、宇宙技術分野での協業、持続可能な開発への取り組みなど、幅広い領域にわたり協力体制を築いていく意向が確認された。少子高齢化や介護分野での技術連携、若手人材・研究者の交流拡大など、社会課題への共同対応にも注力していく。

今回の会談と声明を通じ、日・フィンランドの戦略的パートナーシップは一層強化され、今後の多分野にわたる具体的な協力の進展が期待されている。

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