舞台裏》「台北リコールの嵐」の裏側 拘留、辞任、そして広がる動揺

2025-06-19 14:59
国民党台北市党部の黄呂錦茹主任委員が拘束され、台北市議会議長の戴錫欽(写真)が代理主任委員に就任した。しかし、彼が党ホールで発言した言葉が、多くの議員を驚かせた。(写真/柯承惠撮影)
国民党台北市党部の黄呂錦茹主任委員が拘束され、台北市議会議長の戴錫欽(写真)が代理主任委員に就任した。しかし、彼が党ホールで発言した言葉が、多くの議員を驚かせた。(写真/柯承惠撮影)
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国民党が各地で展開しているリコール運動において、多数の不正署名が発覚し、台湾全土でおよそ100人の党員が取り調べや拘留を受けている。

特に、台北市党部主委の黄呂錦茹氏と基隆市党部主委の呉国勝氏が拘留されたことにより、国民党陣営の支持者の間では不満が高まり、4月26日に開催された凱達格蘭大道での10万人規模の抗議集会を後押しする要因となった。

拘留中の黄呂氏について、国民党の李明賢議員は「6人部屋で拘置され、トイレのすぐ隣で寝ることを強いられている」と状況を批判。全国民が注視する中、公正な扱いがなされているのか疑問を呈し、「比例原則にも反している」と訴えた。

6月17日午後、2か月間の拘留期限を迎えた黄呂氏と他の台北市党員は、延押庭(拘留延長を判断する審理)に出廷。党内からは多くの友人らが駆けつけ、黄呂氏の無事な帰還を願った。黄呂氏の弁護士は、本人が保釈されれば主委を辞任する意向をすでに党本部に伝えていたと明かし、「低血圧の治療が必要なため、保釈後は静養に専念したい」と訴えた。

しかし、こうした主張は裁判所に認められず、黄呂氏は辞任の意思を表明しているにもかかわらず、拘留が継続され、面会も認められていない。この状況は台北市党部の人事に影響を与え、党内には意気消沈の空気も広がっている。

20250417-国民党台北市党部主委の黄呂錦茹(中央)17日夜に北検での事情聴取に送られる。(顔麟宇撮影)
黄呂錦茹氏(中央)は保釈されたら主任委員を辞任すると表明したが、最終的に勾留が延長された。(写真/顔麟宇撮影)

黄呂氏の後任に戴錫欽氏 台北市党部の引き継ぎに注目

健康上の理由から、黄呂氏が保釈された場合でも、主委を辞任する可能性が高まっている。黄呂氏は75歳と高齢であり、過去に軽度の脳卒中を起こした経緯もある。友人たちは、今後は健康に配慮しながら資金面で党を支援する形が望ましいと助言している。

当初、黄呂氏が後任にと考えていた台北市議会議長の戴錫欽氏は、これまで主委就任に積極的ではなかった。そのため黄呂氏が続投せざるを得ない状況が続いていた。

しかし、黄呂氏の拘留を受けて、一時的に副主委の張延廷氏が代理を務める可能性も浮上したが、最終的には朱立倫主席の決定により、戴錫欽氏が代理主委に指名された。この決定により、台北市の国民党陣営内には一定の安心感が広がった。

その後、戴氏は党団書記長の李明賢氏とともに、台北市政およびリコール反対運動の推進に取り組み、5月中旬には民進党議員に対抗するため宣伝車を出動させるなど、積極的な行動を展開した

こうした中、《風傳媒》によれば、6月9日に台北市議会で行われた党団会議では、市政およびリコール戦略が議題に上がったとされる。

会議中、戴氏は内容を外部に漏らさないよう指示したが、「朱立倫氏と話し合い、2か月だけ代理を務める」との発言が聞き取られた。この発言に、多くの議員が驚きを示し、リコール運動が最終段階に入る中で再び主委不在の事態に陥るのではないかと懸念が広がった。 (関連記事: 台湾民意基金会世論調査》国民党議員リコール、反対が急増 最新世論調査で70万人が反対に転向 関連記事をもっと読む

20250514-国民党主席朱立倫(右)、台北市議会議長戴錫欽(左)14日出席「罷双呉、連署しよう」国民党台北市議会党団動員車隊掃街活動。(柯承惠撮影)
戴錫欽氏(左)は党団会議で、国民党主席朱立倫氏(右)との間で2ヶ月間だけ代理を務める旨を口外したと伝えられている。(写真/柯承惠撮影)

「2か月だけ代理」発言に波紋 台北市党部の行方に懸念も

こうした中、《風傳媒》によれば、6月9日に台北市議会で行われた党団会議では、市政およびリコール戦略が議題に上がったとされる。

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