トランプ氏がイランを攻撃したら何が起こるのか――米専門家が語る最悪のシナリオ

2025-06-20 13:24
2025年6月17日、パキスタンのイスラマバード(Islamabad)で、シーア派ムスリムがイスラエルによるイラン空襲に抗議し、アメリカとイスラエルの旗の模型を焼く。(AP通信)
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ランの濃縮ウラン計画と潜在的な核兵器保有の懸念を背景に、イスラエルは先週、イランに対して奇襲的な軍事行動を開始した。その後、両国は無人機やミサイルによる報復の応酬を繰り返している。こうした中、アメリカのトランプ前大統領は当初、外交的解決を模索していたが、最近は強硬姿勢を示し始めた。イランの最高指導者ハメネイ師に対し「お前がどこに隠れているか知っている」と発言し、無条件での降伏を要求している。

これに対し、ハメネイ氏は毅然とした態度でアメリカの要求を拒否。今後、米軍が参戦するか否か、そして「バンカーバスター」でイランの核関連施設を攻撃するかどうかが、両国関係の重大な分岐点になるとみられている。米メディア《Politico》はこの状況を受け、ワシントンの専門家7人に今後起こりうるシナリオを聞いた

1. イランが核兵器獲得に踏み切る可能性も

ライアン・クロッカー氏(Ryan Crocker)/ランド研究所外交・安全保障部門議長、元アフガニスタン、イラク、パキスタン、シリア、クウェート、レバノンの米大使

アメリカがイランに対して実際に軍事攻撃を行った場合、イランは2つの選択肢に直面する。一つは交渉のテーブルに戻り、ある程度の濃縮能力を保持しようとすること。もう一つは報復に出ることである。

イランが選ぶ報復手段には、ホルムズ海峡の封鎖、アラビア湾地域のエネルギー施設への攻撃、さらには中東各地に展開する米軍や外交施設への傘下勢力による攻撃が含まれるかもしれない。イスラエルに対する影響力は低下しているが、そうした行動能力は依然として維持している。

ただし、イランが報復に出れば、アメリカの大規模な反撃を招く可能性が高くなる。航空戦力だけではイランの核開発能力を完全に排除するのは難しく、核科学者を物理的に排除し続けることも不可能だ。結局、濃縮活動を放棄させるには、検証可能な協定を通じてイランに同意させるしかない。さもなければ、軍事衝突は拡大し、イランが核兵器取得を本気で目指す決意を強めるだけだ。

2. 攻撃目標とその「伝え方」が結果を左右する

デニス・ロス氏(Dennis Ross)/ワシントン近東政策研究所ウィリアム・デイヴィッドソン特別研究員、元米中東問題特使

アメリカがイランを爆撃したらどうなるのかという問いは、一見シンプルだが実際には非常に複雑だ。重要なのは「どこを攻撃するか」と「それをどう伝えるか」である。

仮にトランプ氏が「イランが核の選択肢を持つことを許さない」という名目で、山中にあるウラン濃縮施設フォルドウを爆撃すると発表した場合、抑制的な行動と受け取られる可能性がある。イスラエルにはフォルドウを破壊する能力がなく、それができるのはアメリカだけだ。イランがこの施設を維持しているという事実は、イランが将来的な核保有の選択肢を残しているというメッセージに等しい。

トランプ氏が「これは戦争ではなく核兵器の敷居を超えさせないための限定攻撃だ」と宣言すれば、拡大は防げるかもしれない。しかし、仮にアメリカが政権交代まで視野に入れてより大規模な爆撃を行えば、イランの指導者は「失うものは何もない」と判断し、ホルムズ海峡の封鎖や、アメリカの中東同盟国の石油施設への攻撃といった強硬な手段に出る恐れがある。