米ブルームバーグの29日の報道によれば、台湾の頼清徳総統が過去1週間に国内外で連続して打撃を受け、政権基盤や国際的存在感が大きく揺らいでいると報じた。米国による対台湾関税の決定期限は8月1日に迫るが、トランプ政権は具体的な数字を示していない。台湾側は日本と同様に15%の関税が適用される可能性を見込むが、米国は対等な関係を示すどころか、台湾に対米投資の大幅増を求める姿勢を見せている。
専門家は、台湾が米中対立の駆け引き材料にされ、戦略的に周辺化されるリスクを警告している。
国内リコールは不発、外交では米国通過要請も拒否
国内政治でも頼政権は苦境にある。7月26日、野党議員を対象としたリコール案は大差で否決され、民進党が国会で主導権を握る可能性は大きく後退した。大西洋理事会の宋文笛研究員は、リコール失敗により党内に新たな権力センターが浮上し、頼総統の統合能力を削ぐと指摘。国防予算などの法案審議は、今後さらに厳しい局面を迎える見通しだ。
さらに米国は、頼総統が来月に予定していた米国通過を事実上拒否したと報じられた。背景には中国との貿易交渉への配慮があるとされ、ワシントンが台湾との交流レベルを意図的に引き下げたのではないかとの懸念が広がった。
外務省は拒否を否定し「延期や取り消しはなく、拒否もない」と強調するが、事情に詳しい筋は「実際にはやんわりと断られた」と証言している。
米国は対台湾関税で不透明な圧力、対等なパートナーと言えるのか
米国の対台湾関税は8月1日に正式決定される予定だが、現時点でトランプ政権は「最適な関税率」という曖昧な表現にとどめている。台湾側は日本の約15%の待遇を見込むが、まだ確証はない。さらに米国は、台湾に対し日本が約束した5500億ドル(約80兆円)規模を基準とする追加投資を求める可能性が高い。これにより、台湾が本当に対等なパートナーとして扱われているのか疑念が生じている。シンガポール国立大学の庄嘉穎副教授は「頼清徳政権にとって最大の懸念は、米中貿易交渉が中国寄りに傾き、台湾の利益が犠牲となることだ」と語る。
また、近く発表される米国の半導体関税も注目されている。DBS銀行のマー・ティエイン氏は、短期的には台湾が関税コストを米国の顧客に転嫁できるが、中長期的には米国がサプライチェーンを国内に回帰させる圧力を強めれば、台湾の「シリコンシールド」が揺らぎ、世界が台湾のチップに依存する地政学的安全保障が損なわれる可能性があると指摘した。 (関連記事: 「関税交渉」期限迫る トランプ政権が台湾に「最良税率」提示か、中国は慎重対応 | 関連記事をもっと読む )
台湾は米国の最優先事項ではなく、頼政権は野党との協力を迫られる
昨年、頼清徳総統は2000年以降で最も低い得票率で就任した。就任以降、総統は北京に対して強硬姿勢を鮮明にし、中国側は「分裂主義的な発言を広めている」と批判を強めている。中国外務省の郭家坤報道官は今週、「台湾は中国の一つの省であり、台湾地区には総統はいない」と述べ、米国は中華人民共和国と協力して中米関係の安定的発展を優先すべきだと強調した。