舞台裏》日本と台湾の53年の禁忌を突破 林佳龍外交部長が東京都を訪問

2025-07-30 18:13
台湾の大規模リコール決戦当日、林佳龍氏(写真)は長年の禁忌を低調に突破し、台日断交後初めて公然と日本に上陸した外交部長となった。(資料写真/柯承惠撮影)
台湾の大規模リコール決戦当日、林佳龍氏(写真)は長年の禁忌を低調に突破し、台日断交後初めて公然と日本に上陸した外交部長となった。(資料写真/柯承惠撮影)
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台湾全土を巻き込む大規模リコールの渦中、台湾の対日外交は静かに歴史的な一歩を踏み出していた。7月25日正午、外交部長の林佳龍氏は自身のフェイスブックでリコールに言及し、国内メディアからは「昼休みに政党活動をしているのでは」と批判され、行政中立法の境界線を踏んでいると指摘された。しかし、その投稿の時点で林氏は台北市の外交部本部にはおらず、飛行機で3時間以上離れた日本・東京に滞在していた。

林氏は出国前に友人との会食で訪日予定を伝えていたが、外交部長の出張は珍しくないため特に驚かれなかった。しかし、その後、日本到着が明らかになる。台湾の外交部長が日本を訪れるのは、1972年の台日断交以来53年ぶりの極めて異例のことだ。NHKも「極めて異例」と報じた。公開資料でも、断交後に国民党・民進党いずれの政権下でも外交部長の訪日「公開」記録は存在しない。断交当時の沈昌煥外交部長は1965年に日本を訪れたことがあるが、それ以来の出来事となる。林氏はどのように禁忌を破って日本訪問を実現し、中国の反発を招いたのか。彼は今回、誰と会い、どんな任務を帯びていたのか。

20250726-立委罷免公投案投開票所開票畫面。(陳品佑攝)
7月26日の大規模リコール投票を前に、林佳龍氏はすでに低調に訪日していた。(写真/陳品佑撮影)

林佳龍氏、外交の禁忌を破り日本訪問 中国の反発必至

林氏が台湾で最後に公の場に現れたのは7月23日午前、ソマリランド外務・国際協力部長の訪台に合わせた会談と、2025年台欧半導体短期研修計画の交流茶会の主催だった。その後、日本に渡った林氏との会談は、自由民主党青年局長の中曽根康隆議員が7月24日夜にSNSで公表。翌25日には日華議員懇談会長の古屋圭司議員も、林氏との会合写真をSNSに投稿した。

古屋議員の投稿が7月25日午後3時28分に出ると、中日双方の外交筋は騒然となった。約6時間後、中国外交部は公式サイトで声明を発表し、劉勁松アジア局長が在中日本大使館の首席公使を緊急に呼び出して、日本が「林佳龍訪問をしつこく誘った」として抗議。翌日、日本大使館は公式サイトで簡潔な声明を出し、前日に劉氏から電話を受けた事実を認めつつ、首席公使の横地晃氏が日本政府の台湾政策を説明したとした。

20250725-自民黨青年局長的眾議員中曽根康隆於社群媒體貼出與林佳龍、我國駐日代表李逸洋合照。(取自中曽根康隆Instagram)
7月25日、中曽根康隆氏がソーシャルメディアに投稿した写真には、林佳龍氏と日本駐台代表・李逸洋氏が写っている。(写真/中曽根康隆Instagramより)

過去は秘密、今回は日本が積極的に公開

林氏の訪日に対し中国は強く反発し、日本政府に悪影響の回避を求めたが、日本側は冷静な対応を選んだようだ。10年前、当時民進党の総統候補だった蔡英文氏が日本を訪れた際には、北京の抗議を受けて、実際に面会が行われても蔡氏は否認、安倍晋三氏も沈黙していた。しかし今回は、日本側が訪問を公開し、台湾側は否認もコメントもせず、両者間の合意に基づく部分的な公式交流とされている。

特に、日本外務省と米国務省は台湾要人との接触制限ルールが似ており、台湾の正副総統、行政院長、国防部長、外交部長の訪問を制限する「五黒名簿」が存在する。米国はこの「五長」のワシントン訪問を厳格に監視しているが、日本はより保守的で、台湾要人が日本の地を踏むこと自体が難しい。台湾外交パスポート保持者は日本入国にビザは不要だが、免除対象国は63か国に限られている。

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