9月13日から21日までの9日間、国立競技場を舞台に世界最高峰の陸上大会『東京2025世界陸上』が開催されている。大会期間中、東京都は国立競技場外構部のステージエリアと都立明治公園のパークエリアを会場に、世界陸上を盛り上げるイベント「TOKYO FORWARD 2025 for世界陸上」を展開。アスリートによるトークショーや音楽ライブ、伝統文化パフォーマンスやスポーツ体験など、多彩なプログラムが来場者を迎えている。

初日のステージには、マラソン日本記録保持者でプロランナーの大迫傑さんと、タレントのハリー杉山さんが登壇。大迫さんは「久々の登壇で緊張している」と率直な心境を語りつつ、「世界陸上の魅力を少しでも伝えたい」と意欲を示した。さらに、東京五輪で無観客開催を経験したことに触れ、「スタジアムに観客が戻り、声援を受けて走れるのは素晴らしい」と観客の存在の意義を強調した。

トークでは、フルマラソンにおける戦略や準備の重要性が語られた。大迫さんは「暑さや湿度への備えが欠かせない」と指摘し、給水所での糖質・水分補給の工夫や、レース直前にアイスベストを着用して深部体温を下げる方法を紹介。「42.195キロを走るだけでなく、戦略が大切」と強調した。また、コースの特徴について「35キロ以降の長い上り坂が勝負所になる」と分析し、後半での展開がレースの鍵を握ると説明した。

さらに、日本代表選手への期待についても具体的に言及。男子では吉田祐也選手を「勝負強さがある」と高く評価し、小山直城選手については「世界を走った経験を活かし落ち着いて臨める」と語った。近藤亮太選手については「ダークホース的存在で、思い切った走りができれば好結果につながる」と展望した。女子では佐藤早也伽選手や小林香菜選手を「未知数ながら大きな飛躍が期待できる」と位置づけ、無心で走る新鋭選手が台頭する可能性に触れた。

また、レース直前の過ごし方についても自身の経験を披露。「前日はうどんなど脂っこくない炭水化物を摂り、軽い刺激を入れる程度の練習をする」「ホテルにこもりきりにならず、散歩や買い物で気分を切り替える」と述べ、心身のコンディション管理の重要性を語った。最後には「マラソンは何が起きるか分からない。だからこそ自信を持って一つひとつの選択を重ねてほしい」と選手にエールを送り、「諦める力も時に必要」とメッセージを残した。この言葉にハリー杉山さんも「スポーツだけでなく人生にも通じる」と共感を示し、会場は大きな拍手に包まれた。 (関連記事: 世界陸上東京2025を盛り「ASICS MOVE STREET」開幕 武井壮・石川佳純・江村美咲が語る世界陸上の魅力とは | 関連記事をもっと読む )

同じステージでは、書道家でVR書道アーティストの青柳美扇さんが「瞬間」の二文字を揮毫。金色の線と赤い円を組み合わせた作品には、東京の輝きと日本国旗を象徴する意匠が込められ、世界陸上の幕開けにふさわしい迫力を放った。観客は筆が紙を走る瞬間を固唾をのんで見守り、完成と同時に大きな歓声と拍手が沸き起こった。