今年の太平洋諸島フォーラム(PIF)が、台湾と外交関係を結ぶパラオで開幕した。中国政府の太平洋島しょ国担当特使、銭波氏が台湾の出席について「必ず結果を伴う」と警告するなか、台湾の林佳龍外交部長(外相)は代表団を率い、「開発パートナー」として会議に出席した。
報道によると、林氏は現地で記者団の取材に応じ、「中国の威圧によって妥協すべきではない」と強調した。また、中国は国際的な行事に参加する際、主催国の決定を尊重せず、自らを「主人」のように振る舞い、全体の雰囲気を壊していると批判した。
第55回PIF首脳会議は8月31日夜に正式に開幕した。今年はパラオが主催し、18の加盟国・地域に加え、米国、中国、日本など21の対話パートナーを年次首脳会議に改めて招待した。
台湾は1993年から維持している「開発パートナー」として参加した。林氏は国内各分野の産業関係者を含む代表団を率い、8月27日にパラオ入りした。PIF首脳会議の開会式では、各地から集まった出席者とともに、パラオ側が用意した伝統文化のパフォーマンスを鑑賞した。
一方、オーストラリア放送協会(ABC)によると、中国の銭氏は開会式後、メディアに対し、パラオが台湾に国際参加の機会を与えていることについて、北京は「重大な懸念」を抱いていると述べた。また、中国は太平洋諸国の大多数から「理解と支持」を得ていると主張した。
銭氏は、中国側がすでにパラオ政府とPIF事務局に立場を伝えており、正式な声明を通じて不満を表明すると説明。台湾の出席について「必ず結果を伴う」と述べ、「これは脅しではない。主権国家として、他国と同様、われわれにも当然懸念がある」とけん制した。
林佳龍氏「パーティーに参加するなら主催者の決めたことを尊重するものだ」
中国特使による「結果を伴う」との発言について、『日経アジア』によると、林氏は現地で記者団の取材に応じ、国際的な会合を「ある国」が自らの立場を押し付けるための口実にしてはならないと述べた。
林氏は、台湾が長年にわたりデジタル技術、医療・ヘルスケア、スマート農業などを通じて太平洋地域を支援し、PIFと連携して地域の発展を後押ししてきたことを挙げた。
そのうえで、「われわれは中国の威圧によって妥協すべきではない。PIFの18の加盟国・地域だけが、コンセンサスに基づいて共同で決定を下すことができる」と強調した。
『日経アジア』によると、林氏は昨年、「ある国」が自らの政治的立場に固執した結果、PIFの対話パートナーと開発パートナーのすべてが会議に出席できなくなったことにも言及し、「これは太平洋地域のすべての国にとって大きな損失だった」と述べた。
さらに、「われわれがパーティーに参加するなら、主催者の決めたことを尊重するものだ。しかし中国は毎回パーティーに参加すると、自らを主人のように振る舞い、パーティー全体の雰囲気を壊している」と皮肉った。
台湾メディア『中央社』によると、台湾外交部は林氏の発言として、今回PIFに参加できたことをうれしく思うとともに、主催国パラオの対応に特に感謝していると伝えた。
「太平洋の道」に言及 林佳龍氏「台湾も責任を共に担う」
林氏は1日、フェイスブックへの投稿で、今年のPIFのテーマが「B.E.L.A.U.」で、そのうち「U」は結束(Unity)を意味すると紹介した。
林氏は、パラオのスランゲル・ウィップス・ジュニア大統領が開会あいさつで、太平洋各国にはそれぞれ異なる歴史、文化、発展上のニーズがある一方、共通の課題に直面するなかでは、互いの声に耳を傾け、相違を認めながら共通点を見いだし、共に前進するための合意を築くことがより重要だと強調したことを紹介した。
また、「太平洋の道(Pacific Way)」とは、違いの中からコンセンサスを見いだすことであり、「これこそが太平洋の最も大切な力だ」と述べた。
林氏によると、パラオ滞在中には、台湾と外交関係を結ぶツバルのフェレティ・テオ首相、グアムのルー・レオン・ゲレロ知事のほか、太平洋地域のパートナーや理念を同じくする国々の関係者と意見を交わした。
現在、太平洋地域は気候変動、海洋の持続可能性、エネルギー安全保障、経済発展、地域安全保障など複数の課題に同時に直面している。これらの問題は互いに関係しており、どの国も単独で対応することはできないとして、「変化が大きい時ほど、パートナー同士の協力が必要だ」と強調した。
林氏は、台湾も太平洋の一員として責任を共に担う意思があると表明した。
台湾は長年にわたり、医療、農業、教育、エネルギー、産業発展などの分野で太平洋のパートナーとの協力を続けており、今回のパラオ訪問でも、こうした協力が徐々に実行に移されていることを確認したという。
台湾の経験と能力を現地のニーズに実際に役立て、より多くの発展機会を生み出したいとし、「太平洋が結束し協力するほど、自らの未来をつかむ力も強くなる。台湾は引き続き、信頼できる責任あるパートナーとして、太平洋の仲間とともに、この海の平和、安全、繁栄を守っていく」と述べた。
米国務省、台湾のパラオ支援を評価 林佳龍氏「台米協力の拡大を歓迎」
米国務省は1日、「太平洋の繁栄を推進する――米国の太平洋諸島フォーラムへの関与」と題する資料を発表した。
資料では、太平洋島しょ国の安全と繁栄に対する米国のコミットメントは揺るぎなく、持続的なものであり、「アメリカファースト」の外交政策における中核的な柱でもあると説明した。
また、ドナルド・トランプ米大統領の下、米国は「商業外交」を優先し、太平洋地域への対外援助計画を再調整しているとした。米国企業への支援や、民間部門主導の経済成長を促すインフラ投資に重点を置いており、その中には台湾との協力事業2件も含まれている。
米国務省は、「パラオ国立病院の移転」や「パラオの飲料水のサンプリング・研修」など、台湾と米国、理念を同じくする国々による協力事業にも言及した。これらは、台湾と外交関係を結ぶ太平洋島しょ国や地域の発展を共同で促進する事業とされている。
また米国務省は8月29日、メディアからの問い合わせに対し、台湾が引き続きPIFに参加することを米国は強く支持すると表明した。台湾について、信頼でき、理念を同じくする民主的なパートナーであり、太平洋地域全体の繁栄と経済発展に重要な貢献をしていると評価した。
台湾外交部は2日午後、これらの米側の発言を受けた林氏のコメントを発表した。
林氏は、米国が引き続き台湾の国際参加を公に支持し、台湾による地域発展への貢献を評価していることを歓迎した。
また、台湾と米国が太平洋地域やその他の地域で具体的な協力を引き続き拡大していくことを歓迎すると表明。台湾の「総合外交」と米国の「商業外交」が相互に補完し合うなか、台米関係や、台湾と国交樹立国、理念を同じくする国々との関係、さらに世界各地域の繁栄と安定が今後も発展していくことに期待を示した。